2020年2月16日日曜日

拾い読み日記 156


 また、本の処分をした。この機会に蔵書をすべて把握したくなり、本棚の整理をはじめてみたら、おもしろいのだが、ぜんぜん終わらない。夫に引き継ぐと、夢中になって整えている。朝、本棚は、生まれ変わったようになっていた。見ていると、また、どんどん、手を入れたくなる。本棚は、ふしぎな、いきものだ。並べ替えるたび、あたらしい繋がりができる。あたらしい可能性が生まれる。この関係の網の目のただなかで、何を読んでもいい。どこからでも、どこかへいけそうだ、と思う。

 ポール・オースター『空腹の技法』を読んだ。「エドモン・ジャベスとの対話」より、エドモン・ジャベスの言葉。

 岸に寄せてくるのは波じゃない。一回ごとに海全体が寄せ、海全体が引くんだ。決して単なる波ではない、つねにすべてが寄せ、つねにすべてが引く。これこそ私のすべての本にある、何より根本の動きだ。すべてはほかのすべてとつながっている。そこでは海が、すべての面で問われる——その深さにおいて、動きにおいて、あとに残していく泡において、岸辺に残していく華奢(きゃしゃ)なレースにおいて……一瞬一瞬、どんな小さな問いのなかでも、本全体が戻ってきて、本全体が引いていくんだ。(下線部は傍点)

 たちまち、あたまに海のイメージがひろがって、心地よくなり、本を開いたまま伏せて、一時間ほど眠った。あらわれては消える、華奢なレースの文字たち。海と本が、眠りのなかで、たゆたっていた。