2023年6月27日火曜日

fumbling ポップアップ  




 本と商い ある日、の喫茶コーナーで開催中の、 fumblingポップアップ、オンラインでも公開中です。
 ひとりですったもんだしてつくった本『fumbling』をはじめ、描いたり刷ったりしたものたちです。いずれも、かたち、色、ことばに、手でふれたい、あたらしいなにかを手でさぐりたい、という思いから、つくったものです。

 sunny cardは、さまざまな言語のsunnyの「絵はがき」です。しらない言語を思い、その音を口にのせてみるだけで、しばられているものから解放されるような感覚がありました。手がおもむくままに、線を描いたり色を塗ったりするときも、おなじように、ふっと自由な、幸福な気持ちがやってきました。

 poemoという、poemとまぎらわしい版画のシリーズは、身近なものを版材に用いて、これも手さぐりでつくったものです。製作中、どんなふうになるのかわからなくて、迷いながらすすむところは、本をつくるのと、似ているようでちがっていて、そこが、おもしろかったです。いま、試してみたいことをやってみて、そうしてできたものたち、という感じです。

 こうしてみると、「fumbling」は、つくることそのものが、テーマなのかもしれません。

 ある日、では、ヒロイヨミ社の本、たくさん扱ってもらっています。(『漂流箋』や『十一月』『本をひらくと』など、こちらに在庫がなくなったものもいくつかあります)

 ではでは、ひきつづき、どうぞよろしくお願いいたします。
むしあつい日がつづきますが、どうぞお元気でおすごしください。
 

2023年6月9日金曜日

ある日/読むひと


夜、友人と食事して、帰り道。いきつけの焼き鳥屋に夫がいるのが、窓から見えた。カウンターで、熱心に本を読んでいる。中に入って声をかけようか、と一瞬思ったけれど、やめておく。彼の貴重な読書の時間を、邪魔したくなかった。
ところが、家に着いたら、彼がいた。聞けば、見かけた直後に店を出たらしい。べつの道を通って、早歩きで帰ってきた。ふしぎでもなんでもないことなのに、狐につままれたみたいだった。
夜が明けても、彼のまぼろしを見たような、奇妙な感じは抜けない。ページを射貫くような、強くまっすぐな目で本を読んでいたひと。またどこかで彼を見かけたら、やはり声はかけずに、だまって通り過ぎるだろう。

2023年6月5日月曜日

ある日/放たれた本


井の頭線でランドセルの男の子が隣で本を読み始めて、それを見ていた晴れた午後。

「雨ふりの日は、田舎のおばあちゃんがしてたみたいに、窓をつたうしずくをじっと見てるんだって。」

それから彼はねてしまって、ページをおさえていた小さな手から放たれた本がはらはらひろがり、鳥のはばたきのような音をたてた。