2011年10月24日月曜日

本の島々





青山ブックセンター本店にてブックフェア「本の島々」開催中です。管啓次郎さん、蜂飼耳さん、郷原佳以さん、渡辺富士雄さん、樽本樹廣さん+山川真由子さん、越川芳明さん、桂川潤さん、阿部日奈子さんらに選書をお願いしました。ぜひこの8つの島の連なる様子、棚から吹いてくる気持ちのよい風、店頭で感じていただけたらと思います。本のリストと選者のコメントを掲載した冊子、この棚から一冊お買い上げのお客さまに差し上げます。


この冊子『本の島々』、ヒロイヨミ社山元がデザインを担当しました。表紙にはJAM印刷のツヤプリを、ごり押し気味に試してみました。いやあ、メンバーにはなかなか好評でよかったです。刷り上がってきた日は、うっとりしながら「ツヤツヤしてるね……」「プリッと盛り上がってるね……」と何度も確認し合っていました。


今回は久しぶり、約10年ぶりに原稿依頼も一部担当させていただき、どきどきでした。編集の職を辞したのは、デザインに興味がわいたから……ということに表向きにはなっていますが、実際のところ、原稿依頼が苦手だから、という非常にネガティブな理由もありましたので(当時はメールもあまり普及していませんでしたし)、まあなんといいますか、いい経験ができました。


棚のそばには、昨年BEKAが作った三角の冊子『本の島へ』もありますので、ぜひ読んでみてください。わたしは厚いvol.1のほうに、堀江敏幸さんの『おぱらばん』と須賀敦子さんの『イタリアの詩人たち』について書きました。「ユリイカ」にギューッと小さい文字で詰め込まれた「おぱらばん」を埃っぽい会社で目をチカチカさせながら読んでいたころのこと、堀江さんの連載「回送電車」を本にしたい、と津田さんに喫茶店でいわれた時のこと。このところよく思い出します。あのとき、わたしが「そうですね、堀江さんの文章は、やっぱり本の形で読むのがいちばんいいですものね」といったら、津田さんは目を輝かせて愉快そうに微笑んでくれて、わたしもなんだかうれしくなったことを覚えています。まるで、よくできたね、と頭をなでられた子どものように。



さて、今年もブックファースト新宿店のブックフェア「名著百選」に参加させていただき、「この一冊が私を支えてくれた」というお題で一冊選びました。わたしはまだ行ってませんが、どんな本が並んでいるのか、とてもたのしみです。



目白のひぐらし文庫では『Traces 痕跡』の取り扱いが始まりました。ブログでは、「痕跡アート」として紹介していただき、うれしいかぎりです。昨年の「旅の栞」ではさほど売れませんでしたが、これを見てヒロイヨミ社のことを気にしてくださるようになった方(もえぎさん)もいたと知り、作ってよかったなとしみじみ思います。ここで取り上げたドナルド・エヴァンズを知ったのは、もちろん平出さんの本で、です。



「旅の栞 vol.3」、22日に無事終了しました。ご来場のみなさま、どうもありがとうございました。 



追伸 黒いベーグルを出したら「たどん?」といわれた朝

2011年10月13日木曜日

旅の栞vol.3はじまりました





旅の栞vol.3、はじまりました。


ananas pressが新たに作った『Coffee Break コーヒー・ブレイク』という栞のセットは、世界のあちこちに住む友人たちに、それぞれの国の言葉で「コーヒーいかが?」と書いてもらったものです。絵もいっしょに描いてもらいました。全部で12枚、紙もばらばらでおもしろいですよ。





今年もすてきな栞があつまりました。しまりす(石松)さんのあっと驚くキュートな巨大栞、あきさんのロマンチックなおさかな栞、アベちゃんの詩情あふれる青の栞。riccaとタイガーブックスさんによる、おもしろそうな古本もたくさんです。Cat's Cradleのごはんとおやつ、眺めているだけで楽しい気持ちになってくる本棚とあわせて楽しんでいってください。


それにしても……こうした展示のDMを送るのっていつも時間がかかります。しかもこのところいろんな作業に追われていて、後まわしになってしまいました……。

グループ展の案内状の宛名をカフェで書こうとして書きあぐねる宇佐見英治さんのエッセイ、かつて読んで強く心に残っているのは、自分もまったく同じように感じているからです。


この人には気の毒だから、この人に見られるのは恥ずかしいから、奴は馬鹿にして見に来まい、そう思って名を拾ってゆくと限られる。ときどき書く手をおいて筋向かいの美しい娘を見ると、苺の唇から煙草のけむりが上っている。十二、三枚ほど書いて疲れた。また彼女を見た。葉書はまだまだ残っている。


「案内状」 宇佐見英治『三つの言葉』(みすず書房)より


はてどうしようと思ったのち、ふとシャルル・ボードレール様と書いてみた宇佐見さん。スタンダール、曹雪芹の名も。……その手があったか。それではわたしもブルーノ・ムナーリ様、と書いて出してみたいところです。生きてるひとたちはみんないそがしそうだしなあ……。いやいや、そこをなんとか、万障お繰り合わせのうえ足をお運びいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。



追伸 周辺情報〜會津八一記念博物館演劇博物館などもおすすめです

2011年10月2日日曜日

「旅の栞vol.3」のおしらせ





かまくらブックフェスタ「活版とことば」展、ご来場いただいたみなさま、どうもありがとうございました。

始まった、と思ったら、あれっという間に終わってしまった二日間……。たくさんの人にお目にかかってお話しして、わたし自身もたくさん本を買ってほくほくでした。本を作る人には、独特の雰囲気があって、引きこまれてしまいます。なかでも、『書紀』と『書紀=紀』と『stylus』をvia wwalnutsのブースで購入したときの平出隆さんとのふしぎなやりとり……。忘れがたいです。いつだったか平出さんが新聞に書かれていた言葉、「すべての書物がスキャンされようとしている時代、それはプライヴェート・プレスにとっては挑みがいのある時代である」。こちら切りとって社訓にしておりますので、お目にかかれてとってもしあわせでした。


さて、「活版とことば」展、もうすこしゆっくりと、ゆったりと見ていただきたく思いまして、今冬に都内でも開催する運びとなりました。くわしくは追ってお知らせします。


気がつけばかまくらブックフェスタからもう一週間……季節の変わり目のせいか、はたまた年のせいか、疲れ(あるいは余韻)がなかなか抜けません。ともいってられず、今月はまた別の展示会にananas pressとして参加します。


旅の栞 vol.3 〜古本市と活版アート

10月12日(水)〜10月22日(土)11:30〜22:00 

早稲田・CAT'S CRADLEにて

※18日(火)休み、最終日の展示は21:00まで


古本市プロデュース=古本ユニットricca/古本店タイガーブックス

活版アートによる栞=阿部真弓/石松あや(しまりすデザインセンター)/ananas press(都筑晶絵+山元伸子)/松本亜季


展示のお知らせとして作ったフリーペーパーには、出品予定の本の紹介や、参加者による旅や本にまつわる文章が載っています。亜季さんの紙版画とあわせてお楽しみいただけたらうれしいです。ananas pressは、世界のあちこちに住む(おもにaの)友人たちに協力してもらって、本の栞/栞の本を作っています。しかしあと一週間ちょっとでできるのかどうかきわどいところで、さらには紙屋さんの棚卸しだとかで紙の到着も遅れ、白髪も増える一方の今日このごろ。きのう、今年さいしょの金木犀の匂いに、少々あせりました。いつもだったらわーいとうれしくなるのに。



追伸 都電荒川線に乗って逃亡したい…