2021年3月15日月曜日

拾い読み日記 230


 柿の木に小さな葉がつきはじめて、そのかがやくうすみどり色を見ていると、あかるい気持ちになる。冬のあいだはあまり姿を見せなかったヒヨドリが、たびたびやってくるようになった。今朝、窓を開けると、あわててどこかに飛んでいった。ぴょーんぴょーんと跳ねるようにして飛ぶから、球みたい、と思ってたのしくなる。

 今日は大きな本屋ですきなだけ本を買おう、と決めて、4冊買った。散文詩集、エッセイ集、俳論、小冊子。こころがすこやかになってきたのか、どの本を読んでも、おもしろく感じる。たくさん読みたい。

 制作もしたい。言葉にしたいのか、言葉にできないことをかたちにしたいのか、よくわからない、ちょっと混乱した状態。ただ、何かが胸の奥のほうにあって、それが外に出たがっているような、奇妙な感じがする。


2021年3月4日木曜日

拾い読み日記 229


 柿の木に鳥がやってきて、あまり聞いたことのない声で囀っていた。逆光でよく見えなかったが、メジロのようだった。可憐で、みずみずしくて、複雑で、澄んでいて、美しい音楽を聴いているみたいだった。木は、日のあたるところから芽吹きはじめている。

 白木蓮の花が開きだして、あの花の白は、イエローとシアン、両方はいっているのかな? とかんがえたりして、すこし、しごとでつかれているのかもしれない。

 木蓮は開ききつたり犬を抱く  田中裕明

 開ききったものを見ていると不安になる気持ちは、とてもよくわかる。そういうときは、しっとりとあたたかい、ちいさな生きもののようなもののことを思いだして、胸に抱くように、ずっと思っていたらいい。

 春が近いせいか、気分も上がり下がり、ゆらゆら、ふわふわ、ざわざわした感じ。
 ラジオで聞いた「会いたいね。゜(゜´ω`゜)゜」という曲の長谷川白紙という人の声に、突然、すごくひかれて、そのふるえる糸みたいな繊細な声を聞いていると、からだに小さな震えがはしり、ほんとうに何か、目に見えないものにふれているような気がした。何度もくりかえし聞いているから、そのうちあきるだろうけれど、あきるまでは、聞くだろう。「呼吸で解る飛翔のしくみ」。耳にずっとのこることば。