2018年4月30日月曜日

拾い読み日記 31



「待つ。軽い足取り。それから、草々の合間で白い小石の上を流れるせせらぎのように新鮮に流れる時間。ほほえみ、そして何ということもない、それなのにとても大切な言葉。心の音楽を聴くんだ。聴くことができる人にとって、それはほんとうにすてきなものだ……。
 もちろん欲しいものはたくさんある。すべての果実、すべての花を摘みとりたいと思う。草原を胸いっぱいに吸い込みたいと思う。遊ぶ。でもそれは遊びなんだろうか? 遊びがどこで始まりどこで終わるのかはぜんぜんわからない、でもやさしい気持ちはよくわかる。そして幸福だと思う。」
(アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ『名の明かされない女性への手紙』)

 午前中の用事のあと、早めに家に帰って作業を進めたかったけれど、あまりにも天気がよいので町をぶらぶら歩いてしまう。古本屋で古本を、古着屋でベルトを買った。いきつけでないカフェまで足をのばし、本をよんだり雑誌をよんだりした。けっこう混んでいたが、うるさくはないので、よかった。お店の人はとても小さな声で話す。
 
 『エア メイル』、ふわっとした状態から、だんだんかたまってきた。かたまってから、またふわっとするといいと思う。

2018年4月28日土曜日

拾い読み日記 30



 気持ちのよい晴れ。庭のなずなが枯れつつある。夏草が日に日に伸びている感じ。
 お昼までに2つラフを作って送ったら疲れてしまい、午後からはあたまも少し痛くなってきたので、しばらく横になって休んだ。はっと気づいたら午後の5時で、いそいで机に戻っていくつかの画像をスキャンした。すぐにレイアウトしてみる。あまり進まなかったが、いくつかのよい思いつきもあり、なんとなく、うまくいきそうな気がする。やってみないとわからないことばかり。

 昨日、国立のmuseumshop Tで買った李禹煥『余白の芸術』が、とてもおもしろい。
 
 「私は時に、自我–言葉から出発するが、つねにその先の方の未確定で未知な世界と関わりたい。自我で世界を言語化したり世界を所有したいのではなく、世界と関係し知覚したいのである。」
 
 明日も今日のつづきをやろう。あと一つラフを送ったら仕事はひと段落。できればどこか、静かなところで本を読みたい。

2018年4月26日木曜日

拾い読み日記 29



 一件入稿を済ませて出かけた。用事で二軒の本屋さんへ。あるミスをおかしてしまい、心配と後悔でもやもやしながら帰ってきた。反省して、ある決意をする。
 切り替えよう。
 
 帰りは水中書店で20分ほどお店番。そのあと店内をうろうろしていた。棚を見ていると気が紛れた。いろいろと手にとって読んでみて、おもしろそう、と思っても、レジに向かう気力がわかない。均一に大岡信『百人百句』があって、これはあまり迷わず購入。

 今日はぜんぶで本を4冊買った。行きつけの喫茶店であれこれ開いたり閉じたりした。静かな喫茶店でゆっくりすごしていると、だんだん満たされた気持ちになる。
 リヒターの「ノート」がおもしろかった。

 「九〇年六月六日 眠かったり、気分がのらなかったり、やる気がなくてもよくて、何日も何週間も不調で、つまりなにもしなくてもよい職業とはどんな職業だろうか?」(ゲルハルト・リヒター『写真論絵画論』) 

 川村でリヒター展をみたのは何年前だろうか。たしか最終日で、誕生日だった。いっしょにいった私塾の友人、KTさんとKNPさんは、元気にしているだろうか。元気だといいな、と思う。
 
 明日から、仕事と制作に集中したい。
 

2018年4月25日水曜日

拾い読み日記 28



 「ずいぶん長いこと、日記をあけてしまった。ここに一人いられることきが、そして私の前にたっぷりと時間が開いていてくれるということが、一日もなかったのだ。約束が一つでもあると、たとえそれが午後からでも、時間の質を変えてしまう。気にかかりすぎるのだ。深層心理からわき出てくるものを受け入れる空間がない。それらのイメージや夢は、深い静止した水の中に住んでいて、一日が散りぢりになると、ただ沈んでいってしまう。」(メイ・サートン『独り居の日記』)

 刷り上がったAnnaのDMを届けに西荻窪のHATOBAへ。偶然知り合いが展示していて、円い布のかばんを買った。買うつもりはなかったのだが、白くてまんまるいかばんを持ったとき、ふわっと、たのしくなったのだった。すこし、溜まっていた疲れが抜けた気がする。帰りは喫茶店でカプチーノをのんだ。メイ・サートンの日記を拾い読み。そのあと水中書店に寄って、5分ほどお店番。
 このところ、ひとりで静かにすごす時間があまりない。気になることが多すぎて。
 それに、今月は仕事が多い。再来月の展示の準備もしなくてはならない。
 
 水の中に住んでいるものをすくいあげること。