2021年12月19日日曜日

拾い読み日記 265


  眼鏡をはずすと、本棚にならぶすべての本は輪郭をうしなう。あいまいで、やわらかなかたまりになり、今にも漂いだしそうになる。水のなかにいるようなぼやけた視界で、本をみつめ、数冊の本をつかんで、身にひきよせる。
 
 いつだったか、美術館の「ロスコの部屋」で、眼鏡をはずしてみたとき、とつぜん絵が接近してきて、たじろいだことがあった。にじんだような赤や茶色から、血や土のなまあたたかささえ感じられ、洞窟か、胎内にいるみたいだ、と思った。絵がとけだして、自分のなかに入ってくる。描かれたものに、いだかれる。

 また本が読めるようになった。そのことを、とても、幸福に感じる。机の上には、ベンヤミン、中西夏之、李禹煥、ラルフ・ジェームズ・サヴァリーズ。

2021年12月18日土曜日

ひらいて、とじて


 最終日、のんびり狩野さんとお茶をのんだりしていたら、さいごの2時間ほどで多くの方にご覧いただき、感想を伝えてくださるひともいて、まるで、そっと手紙をわたされたような感じがして、とてもうれしくて、何度も読み返すように、思いだしています。

 ずっとひらいていた白い本をとじて、すみこんでいた社長もつれて、家に帰って、ねむって、目をあけると、「本をひらくと、夢がはじまる」ということばが、おりてきたのでした。ふわりと、羽のようにかろやかに。
 
 展示はおわりましたが、本はおわりません。るすばんさんで、あるいはどこかで、見かけたら、ひらいてみてください。

 こころから、ありがとうございました。みなさまに。

2021年12月9日木曜日

「の、つづき」


 「本をひらくと」「の、つづき」展、開催中です。お越しいただきましたみなさま、寒いなか、どうもありがとうございます。

 bupposoでは、今回の本のために、狩野さんが描いてくれた、本には載らなかった絵と、ヒロイヨミ社の『ある日』の展示をしています。
 『ある日』は、昨年作った小冊子で、ブログやツイッターに書いてきた日記(のような文章)をまとめたものです。
 設営のときに、絵と、『ある日』の1ページを壁に並べてみたら、ぽろっと、意外な、おもしろい感じが出てきた気がしました。しばらくうろうろしていると、あたまのなかで、絵と言葉が、ゆるやかに、かさなったり、はなれたりします。
 「本をひらくと」をつくるまでのできごとと時間を、感じていただけたら、いいなと思います。

 展示に来られない方のために、えほんやさんのオンラインショップでも『本をひらくと』の取り扱いがはじまりました。果林社のほうでは、これまでつくった本が購入できます。

 会期ものこりすくなくなってきました。いそがしくされているひとも多いと思いますが、ゆっくりした気分でみてもらえたら、うれしいです。

 またべつのおしらせです。
 国立のmuseum shop Tで展示「旅のはなし」がはじまります。たくさんの方が参加している、たのしそうな展示です。わたしは文章をよせました。
 12月11日(土)から開催です。こちらもどうぞよろしくおねがいいたします。
 
 追記 「寄稿は会期終了後にまとめる本に掲載します。会場での掲出はありません」だそうです