ひかえめな光沢のある水色の紙を、少しだけ針の先で削ったようなかたちのひこうき雲が、ゆっくり、ゆっくり、進んでいった。ふかみどりのプールの水面がきらめいている。水のなかにはさまざまな生きものがひそんでいるのだろうな、と思う。つぎの夏が来るまで生きものは増えつづけ、みどり色はより深くなる。
月にはいつも不意をつかれてきたけれど、今日は二日月だと知っていたから、さきまわりして待っていた。繊細な、いまにも消えてしまいそうな弱さで光っている。細い月がすきなのは、細い文字がすきなことと、関係があるのか、などとかんがえながら、見ていた。
今日も美術館へはいけなかった。午後、絵本を一冊、読んだ。規則正しく生活して、まじめに仕事をする、くまの話。ひとりで起きて、ひとりで働いて、ひとりで眠る、ある日のくま。すきな仕事をして、おだやかに暮らすぬいぐるみのくまのすがたを見ているだけで、気持ちがおちつく。
それから、エプロンを かけ、
パンのきじを つくります。
パンのきじを どさっ どさっ どさっ!
と こねます。どさっ どさっ どさっ!
それから、パイやケーキを つくります。
(フィービとセルビ。ウォージントン作・絵『パンやのくまさん』まさきるりこ訳)
こういう、どさっどさっどさっという擬態語や、ものの数をかぞえるところ(「1こ、2こ、3こ!」)では、たのしそうにさけぶ子どもの声が聞こえる気がして、いつも、ゆかいな気分になる。きっと、読んでいるとき、すぐそばに、しらないこどもや、こどものじぶんが、いるのだ。
