2022年1月16日日曜日

拾い読み日記 267

 
 先月から通いはじめた整体の効果がではじめたようで、腰痛がなくなった。まだ、背中の張りを感じることはあるが、以前よりは、だいぶ、軽くなった。はじめてからだの凝りを感じたのは20歳のころだから、ずいぶん、不調とのつきあいは長い。50歳になろうとして、よくなる、なんてことがあるのだ。

 「名付けようのない踊り」を踊る人の声をラジオで聞いた。聞き始めたら、終わりまで聞きたいと思わせる、何かがあった。声の、深さ、だろうか。とても低いところで響いている。
 言葉が苦手だった、とその人は言った。読んだ本に何が書いてあったか、忘れても、たしかに自分の肉になった。そういう読書をしてきたと。本棚の写真を見た。書庫にただよう雰囲気は、その人の、顔に、からだに、よく似ている。
 
 部屋の本棚をみまわす。これらの本たちと、自分のからだは、どういう関係にあるのだろうか。

2022年1月7日金曜日

拾い読み日記 266


 何の疲れかわからない疲れを感じつつ、本棚の前に立って、目にとまったガートルード・スタインの本を取り出した。

 しゃりしゃりこおったくりーむ、こおるかのじょの湯気、こおるかのじょのしゃりしゃりこおったこおりの海のすばらしくて、ぬきんでていってしまった先立ってぬきんで送られた。(ガートルード・スタイン『地理と戯曲 抄』より)

 何もやる気がしない、と思っていたけれど、何か書く気になってこうして書いているのは、言葉が言葉を呼ぶからだろうか。言葉が言葉を呼ぶ。去年のおわりにみた『偶然と想像』の台詞で聞いた気がする。あの作家は、ある作家を思い出させた。べつに、ぜんぜん似てはいないのに。

 今朝、柿の木に鳩が来て、雪の上をしゃりしゃり音をたてて歩いていた。


2021年12月19日日曜日

拾い読み日記 265


  眼鏡をはずすと、本棚にならぶすべての本は輪郭をうしなう。あいまいで、やわらかなかたまりになり、今にも漂いだしそうになる。水のなかにいるようなぼやけた視界で、本をみつめ、数冊の本をつかんで、身にひきよせる。
 
 いつだったか、美術館の「ロスコの部屋」で、眼鏡をはずしてみたとき、とつぜん絵が接近してきて、たじろいだことがあった。にじんだような赤や茶色から、血や土のなまあたたかささえ感じられ、洞窟か、胎内にいるみたいだ、と思った。絵がとけだして、自分のなかに入ってくる。描かれたものに、いだかれる。

 また本が読めるようになった。そのことを、とても、幸福に感じる。机の上には、ベンヤミン、中西夏之、李禹煥、ラルフ・ジェームズ・サヴァリーズ。

2021年12月18日土曜日

ひらいて、とじて


 最終日、のんびり狩野さんとお茶をのんだりしていたら、さいごの2時間ほどで多くの方にご覧いただき、感想を伝えてくださるひともいて、まるで、そっと手紙をわたされたような感じがして、とてもうれしくて、何度も読み返すように、思いだしています。

 ずっとひらいていた白い本をとじて、すみこんでいた社長もつれて、家に帰って、ねむって、目をあけると、「本をひらくと、夢がはじまる」ということばが、おりてきたのでした。ふわりと、羽のようにかろやかに。
 
 展示はおわりましたが、本はおわりません。るすばんさんで、あるいはどこかで、見かけたら、ひらいてみてください。

 こころから、ありがとうございました。みなさまに。

2021年12月9日木曜日

「の、つづき」


 「本をひらくと」「の、つづき」展、開催中です。お越しいただきましたみなさま、寒いなか、どうもありがとうございます。

 bupposoでは、今回の本のために、狩野さんが描いてくれた、本には載らなかった絵と、ヒロイヨミ社の『ある日』の展示をしています。
 『ある日』は、昨年作った小冊子で、ブログやツイッターに書いてきた日記(のような文章)をまとめたものです。
 設営のときに、絵と、『ある日』の1ページを壁に並べてみたら、ぽろっと、意外な、おもしろい感じが出てきた気がしました。しばらくうろうろしていると、あたまのなかで、絵と言葉が、ゆるやかに、かさなったり、はなれたりします。
 「本をひらくと」をつくるまでのできごとと時間を、感じていただけたら、いいなと思います。

 展示に来られない方のために、えほんやさんのオンラインショップでも『本をひらくと』の取り扱いがはじまりました。果林社のほうでは、これまでつくった本が購入できます。

 会期ものこりすくなくなってきました。いそがしくされているひとも多いと思いますが、ゆっくりした気分でみてもらえたら、うれしいです。

 またべつのおしらせです。
 国立のmuseum shop Tで展示「旅のはなし」がはじまります。たくさんの方が参加している、たのしそうな展示です。わたしは文章をよせました。
 12月11日(土)から開催です。こちらもどうぞよろしくおねがいいたします。
 
 追記 「寄稿は会期終了後にまとめる本に掲載します。会場での掲出はありません」だそうです

 


2021年11月25日木曜日

本をひらくと(2)


  (つづき)

 どうも長くなりそうなので、以降はできるだけさらりと書きたいと思います。

 ことばと絵がいっしょになった本がいい、と思ったときにうかんだのが、狩野岳朗さんの絵でした。狩野さんの絵をみていると、自由な気持ちになれます。窓みたいに、そこから何かが入ってきたり、何かが出ていったりするみたいです。風とか光とか、ささやきとかざわめきとか、何かそういうものたちが。絵っていいものだなあ、と思います。

 この一年、狩野さんとゆっくりやりとりを重ねて、本がかたちになってきました。かたちがだいたいかたまってきたときに、えほんやるすばんばんするかいしゃの荒木さんに見てもらい、ひさしぶりにお店を訪ねると、あたらしい空間ができていて、その、奥の部屋にはじめて足を踏み入れたとき、まるで本の世界の内側にはいりこんだようなときめきをおぼえました。ここにぜひ、『本をひらくと』を置いてみたい、という願いがかない、えほんやさんで、原画とことばの展示を開催するはこびとなりました。

 『本をひらくと』は、できあがってみると、なんとなく素朴で、ふつうで、親しみやすい感じがします。存在を主張しすぎていない、というのか、小声でひかえめ、というのか。
 そういう本がすきだった、とあらためて、気がつきました。いい本、と、もし言われたら、もちろんうれしいですけれど、本っていいな、とか、本がよみたいなあ、とか、ふわっとでも思ってもらえたら、うれしく思います。





 bupposoでの「の、つづき」展については、また後日、書きたいです。

 展示はいずれも12月14日まで開催しています。(水曜日と木曜日はお休みです)

2021年11月24日水曜日

本をひらくと

 
「本をひらくと」「の、つづき」展、ぶじにはじまっています。
 初日の午前中までひっしに製本作業をしておりまして、この数日は、ややくったりとしておりました。毎日ねむたくて、今もあたまがぼうっとしていますが、この本のこと、展示のこと、思いつくままに書いてみたいと思います。

 去年の夏のことです。「本をひらくと」ということばではじまる文章がつぎつぎあたまにうかんだので、それを書きとめておきました。本についての本をよんだり、本のことをかんがえたりしているうちにたまってきた想いが、つもって、いつのまにかことばになってあふれ出てきたようでした。本になるとも思わずに書いたものでしたが、本にしてみたい、と思いました。
 本のかたちでよんでみたい。本にのせて、遠くへとばしてみたい。本からとどいたものを、本にかえしたい。さまざまな思いにゆれていました。いつもは、本をつくる、が先にあって、あとからことばがやってくる感じなので、ことばが先、本があと、というのもはじめてのことです。 (つづく)