2021年5月29日土曜日

拾い読み日記 245

 
 美術館を出たあと、海を見にいこう、と思い立って、南の方にむかって歩いた。15分ほど歩くと公園があって、子どもたちがあそんでいた。野球場もあった。海のそばの野球場って、なんだかいいなあ、と古そうなスコアボードを見あげて思った。小高いところに出て、そこから海が見えるのかと思ったら、富士山が、ぬっとあらわれた。今までに見た富士山のなかで、いちばん綺麗だ、と思った。ぼうっとかすんで、光って。あそこに神さまがいる、と信じる人の気持ちもわかる。
 知らない町で、たくさん迷って、つかれていたので、海はいいか、と一瞬あきらめかけたが、気をとりなおして、また歩いた。

 ひさしぶりの海を前にすると、こころぼそい気持ちになった。なんで来たのかな。来てよかったな。気持ちも波みたいに、いったりきたりする。
 そういえば、最近、海の俳句を探して読んでいた。

 夏の海水兵ひとり紛失す  白泉

 5月の海では、波乗りの人が、あらわれたり消えたりしていた。