2020年5月24日日曜日

拾い読み日記 185


 小説を読み終えて、目を閉じた。言葉でいっぱいになったあたまを、しばし休ませたい、と思った。ねかせておいたらいい感じにおちつく生地みたいに、休んで起きたら、何かこのいりみだれるものが、すこしでも整理され、かたちになるのではないかと思われた。いつのまにか寝入っていて、時計を見たら、2時間経っていた。

 そもそもこの日浅という男は、それがどういう種類のものごとであれ、何か大きなものの崩壊に脆く感動しやすくできていた。

 はじめのほうのこの文章によって、沼田真佑『影裏』にぐんとひきこまれたのは、たぶんまちがいなくて、それは、自分も大きなものの崩壊に弱いせいだと思う。ときにははしたないと自分でも思うくらいに、こころをうばわれる。
 脆さ、崩れ、破片、歪み、秘密、語り/騙り……この小説に惹かれた要素は、いろいろある。何より、文章の密度とうねりが、肌に合った。
 これまでずっと沈黙していた人が急に語り出したときに感じる昂揚とかすかな緊張を、読みながら感じていた。