2020年3月3日火曜日

拾い読み日記 160


 こんなにおちつかない状況で、本などとても読めない、と思っていたのだが、一昨日、アドルフォ・ビオイ゠カサーレスの『モレルの発明』を読み終えた。
 夜も更けて、もう時間がなくて、本を閉じなければ、と思いつつ、どうしても途中でやめられなくて、最後のあたりは、全力疾走するような体感で、ようやく、読み終えた。
 読み終えて、呆然として、それから、まぼろし、ということについてかんがえた。まぼろしをみること。まぼろしとひとつになること。自らがまぼろしとなること。

 不死性は、あらゆる魂のなかに——すでに塵に返ってしまった人間のなかにも、現に生きている人間のなかにも——芽生えることが可能となるだろう。

 モレルも、語り手も、のこされたひとびとも、それぞれに、切ない存在だ。この切なさが、なかなか、消えない。

このごろ、夢をたくさんみる。今朝は、大きな鳥に襲われ、何羽もあたまにのっかってくる夢をみた。鳥のあしゆびの感触が、いやだった。恐怖で、まったくうごけなかった。
 相当、抑圧されているらしい。