2019年2月11日月曜日

拾い読み日記 73


 目が覚めたら11時過ぎだった。ちょっとびっくりした。
髪を切り、吉祥寺に出て、春物のシャツを買って、喫茶店でカフェオレをのんだ。なんとなくチャーミングな店主の、小さな、静かな店で。ペソアとタブッキの本がかばんに入っていて、どちらにしようか少し迷って、タブッキにする。『夢のなかの夢』の一篇を読んだ。「詩人にして変装(なりすまし)の人、フェルナンド・ペソアの夢」。何度も読んでいる一篇。
 ずいぶん読書から離れていた気がするので、何を読んだらいいのかわからない。何を読みたいのか、何なら読めるのか。しばらくは、探りながら本を開こう。くりかえし読んだ言葉をふたたび読むと、心が落ちついて、どこかから戻ってきたようだと思った。
 
 カエイロはため息をもらし、それから微笑んだ。長い話になるが、とかれは切り出した。だが筋道立てて事細かに説明したところで仕方がないし、話を端折っても、きみなら理解してくれるだろう。これだけは知っておいてほしい、わたしはきみだということを。
 わかりやすく話してください、とペソアは言った。
 わたしはきみの心の一番奥深い部分なのだ、カエイロが言った。きみの闇の部分なのだよ。それだからわたしはきみの恩師なんだ。
 隣村の鐘が時を告げた。
 それでぼくはどうしたらいいんです? とペソアは訊ねた。