2026年1月21日水曜日

それではない、と死者がいう


 それではない、と死者がいう。焼香をあげて手を合わせる前におりんを鳴らしたときだった。手元を見ると、いくつかのおりんとりん棒がある。では、これか、と別のおりんを鳴らしてみた。このおりんには、この棒がいい、という組み合わせがあるようだった。めんどうくさいな、とすこし思った。ところであなたは、しんでいないのではないですか。たずねると、いや、軀がまだあるから、今だけ、話せるのだという。気配を感じてドアを開けると、不意をつかれて立ちすくむ人がいた。そのまんまるい目と息をのんだときの音をおぼえている。