2026年1月22日木曜日

拾い読み日記 340

 
 日がしずんで彩度の低いラベンダー色の空に、宝石のかけらのような月がみえて、あまりに綺麗だったので、超越的な存在からの贈りものと思うことにして、すこしのあいだ祈った。「もし君とすれ違ってしまったら世界全体とすれ違うことになる」。昨日みた映画の主人公がいっていた。今日の自分にとっての「君」は、あの月である。月は細ければ細いほど、あやうい気持ちになる。人は際に立っている。

 映画のあと、食事をして、ほろよいで、古本屋に入った。通りすがりの古本屋でたまたま目についた本をぱらぱらめくって、これはどうしても読みたい、と思ったなら、それは遠くから届けられたもの、今届いたばかりのもの、と思って、ただそれを受け取るしかない。

 かくて私たちは、おまえも私も、私からおまえに向って行く言葉、一葉の紙に印刷された燃え立つ言葉に比べてみれば何ものでもないのだ。なぜなら、私はただその言葉を書くためにのみ生きたのだし、その言葉がおまえに宛てられたものだとすれば、おまえはその言葉を聞くだけの力を持ったということで、これからも生きてゆくだろうから。(G.バタイユ『無神学大全 内的体験』出口裕弘訳、現代思潮社