2026年1月20日火曜日

人の姿は見えなくて、球だけが


 人の姿は見えなくて、球だけが見えた。並木のむこうで、澄んだ青に球の白が、ゆるやかな放物線を描いている。少年から少年へ、球は往き来する。その朝、なぜそんな光景にあれほど感動したのか、といえば、不安だったからだろう。あるいは、幸福を感じていたから? 不安も幸福も、ほとんど同じひとつのことに感じるときがある。「もの」を投げる相手がいること。受け取ってくれること。投げ返してくれること。そこにあるのは「信頼」で、それがこのように何気ない、うつくしいかたちであらわれ、自分のまわりの、「信頼」の放物線を意識させてくれたことに、感謝していた。朝の冷たい空気のなかで、バスを待っていたあいだ。