ろくに本が読めない日々が続いている。今日は作業の合間に、一篇の詩を読んだ。マーク・ストランド『ほとんど見えない』より、「風に運ばれる一枚の葉のように」。
仕事を離れた後、場所も知られず、用事が自分にも謎である場所で、微かに灯りのある通りと、暗い路地を歩き、荒廃したアパートの後方の町外れにある、自分の部屋に向かう。季節は冬で、彼はコートの襟を立て、背を丸めて歩く。部屋に着くと小さなテーブルにつき、自分の前に広げられた本を見る。本の中は空白。だから彼は数時間もそれを見つめることができる。
この詩、すごくいいな、好きだな、と思った。寒さ、虚しさ、暗さ、狂おしさ。紙の白さ。
暗くなってから、スーパーへ買い物にいく。だれかの部屋から「YAH YAH YAH」が聞こえてきた。今から一緒にこれから一緒に殴りにいこうか。って、へんな歌詞、でもきらいではない。足を止めてすこし聞いた。
もうすぐ立冬なのに、金木犀が匂っている。3回も咲くなんて、今年の秋は、どこかおかしい。
明日は投票日。