鳥の声で目がさめた。森の中にいるのか、と思うほど、おおきな音だった。南の窓から、北の部屋へ、音は、よく透った。
まぼろしはそらよりきたる身にうすきいのちのやうな言語をまとひ 永井陽子
こんな状態では本など読めない、と思ったときこそ、本を開くべきだ。開くだけで、言葉は目にはいってくるし、はいってきたら、それは、自らが身のうちに隠し持つ本のなかに書きこまれた、ということではないか。白いページは、言葉が見つけてくれる。
うわつきがちなこころを定位置にもどすために、「全歌集」の重さは、いい、と思った。何年かけても読み終わらない本。そもそも、読み終えようとすら思わない本。そうした本と、長い時間をすごすために、長く「ここ」にいたいと思う。