9月のはじまりはずいぶん涼しくて、とつぜん秋がやってきた、と思いましたが、10月のはじまりは、暑いです。今日も、半袖で出かけるつもりです。
いくつか、お知らせがあります。
まもなく発売される白井明大さんの詩集『着雪する小葉となって』(思潮社)のデザインをしました。
組版からかんがえられる仕事は多くないので、貴重な機会でした。本をひらいたら、すっと詩のことばにはいっていけたら、いいと思います。
装画は、大平高之さんです。葉のような、羽のような、舞い降りてきたような、飛び立っていきそうな、ふしぎなかろやかさのある絵です。それから、なにか、やわらかなもの。しずかなつよさのようなもの。詩からうけた印象が、みごとにあらわされていたので、装幀は、あまり、なやみませんでした。
編集は、思潮社の藤井一乃さん。柏木麻里さんの詩集『蝶』につづいて、お世話になりました。藤原印刷による印刷も、すばらしいです。
特装版も、美篶堂で製本中です。思潮社版は並製ですが、こちらはフランス装で、スリーブケース付きです。題字を、うちの小さな活版印刷機adana8×5で刷りました。100部限定です。
どちらも、ぜひ、本屋さんで、手にしてみてもらえたら、さいわいです。
先日、今井友樹監督の『明日をへぐる』というドキュメンタリー映画をみました。
和紙の原料である楮をつくっているところと、つくっているひとたちに、取材した映画です。紙と人と自然について、感じるものごとが多くて、とても受けとめきれないけれど、でも、いま、みることができてよかった、と思った映画でした。
たくさんのひとびとのことを知りました。楮を栽培するひと、収穫した楮を蒸して皮を剥がしてそれをさらにきれいにするために「へぐる」ひと、和紙を漉くひと、和紙に木版画を刷るひと、和紙をつかって古文書などを修理するひと、森と樹を守ろうとするひと。そのひとたちの語ることばだけでなく、その声や、その表情や、その手のうごきが忘れがたく、これから和紙にふれるたび、ふいに、思い出しそうです。
映画をみて何日か経って、パンフレットをよんで、自分のしごとについて、かんがえたりします。本はたくさん出すぎだろう、と思うけれど、その、本のデザインのしごとがなければ、生活はきびしくなりそうだし、ヒロイヨミ社の活動も、むずかしくなるかもしれません。
できるだけ、自分にあまりウソをつかなくてもよいように、こころをくだいて、手をうごかして、しごとをしていけたら、と思います。ひとだけでなく、本や、紙や、ことばの身になって、デザインしたり、制作したりできたらと。
監督の今井さんとは、6年ほど前に、ギャラリーみずのそらで知り合いました。鳥の話を、たくさん、うかがいました。
先月は、都筑晶絵さんの作品『peu belle』の、制作のお手伝い(ケースのデザインなど、すこしですが)もしました。ippo plusでの展示のためにつくられた本です。展示は、残念ながらおわってしまいましたが、本はのこるものだから、なにかの機会に、ぜひみてください。
紙への想いが、濃やかにチャーミングに表現された、「ちょっとうつくしい」、というよりは、とってもうつくしい作品で、はじめてみたとき、はっとしました。あの感じ。しいんとする、と同時に、飛んでいって、ハイタッチしたくなりました。
川越市霞ヶ関の本屋さん、つまずく本屋ホォルで、ananas pressとヒロイヨミ社、北と南とヒロイヨミの本の取り扱いがはじまりました。お近くのかた、ぜひ、寄ってみてくださいね。
長くなりましたが、このへんで。どうぞ、すこやかに、よい秋をおすごしください。
追伸 のみましょう