カレー屋でカレーを待つあいだ、いつものように、新聞を読んでいた。林明子さんの『こんとあき』をめぐる記事があり、なにげなく読み始めたら、ある名前に目がとまった。「担当編集者で、後に夫になった征矢清さん(故人)」とある。
帰ってから、『征矢泰子詩集』の年譜の一行を確認する。「一九六四年 みすず書房時代からの親友、征矢清と結婚。」 どうやら、同一人物らしい。征矢清さんは、児童文学作家でもあった。
そんなわけで、ひさしぶりに征矢泰子の詩を読んだ。「六月のかたつむり」。せまりくるものにおしつぶされそうな今日、この詩をよめたことは、幸運だった。ひとつの詩が、ひとりのわたしに、あるとき、手紙のように届くということ。
六月のあさ
まだ海はとおい
にびいろのそらのした
やけつくすなはまの貝になりたい
六月のかたつむりいっぴき
どうどうめぐりのひびをせおって
みじかいはるのなかもえつきたはなのあと
ゆっくりと海をめざす
きのうのあめにぬれたこのしたくらがり
きららかなまなつの海へのあこがれに
こえもなくからだあつくして
六月のかたつむり あるきつづける