2020年4月24日金曜日

拾い読み日記 177


 遠回りのほうがゆっくり、おそらく着実に、最も快い「なるほど」に私たちを導くのです。

 メアリアン・ウルフ『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳 「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てる(大田直子訳、インターシフト)を読み終えた。
 気が散りやすく、飽きっぽく、長いものが読めない、という自分の性質は、インターネットで読むことをしすぎたせいではないか、はたまた、iPhoneの使いすぎかも、とひじょうに不安になり、途中いくつかのアプリを削除したりもして、ひやひやしつつ、読み終えた。
 いま、自分が必要としているものは、静けさであり、遅さであり、深さであり、遠さである、ということが、はっきりとわかった。わかって、視界が晴れていく感覚があった。
 デジタルで読むときも、紙で読むときも、すこし、読んでいる自分の状態に、意識的になってみようと思った。あたまとからだが、どういう状態になっているのか。

 むくむくと脳への関心が増してきたので、つぎは、石田英敬・東浩紀『新記号論 脳とメディアが出会うとき(ゲンロン)を読むことにする。
 「ヒトはみな同じ文字を書いている」。どういうことか。
 「ヒトは自然を読む脳をニューロンリサイクルすることで、読むヒトのシナプス形成(脳のレターボックス)を獲得しました。ですから、本の頁は自然と同じような空間的拡がりであり、三次元の奥行きを持った記憶の構造体なのです。」(下線部は傍点)

 つんのめりそうになるけれど、ふみとどまる。ゆっくり読もう。すぐに得られる「なるほど」をうたがいながら。