2020年4月9日木曜日

拾い読み日記 172


 世界はかように動揺する。自分はこの動揺を見ている。けれどもそれに加わる事は出来ない。自分の世界と、現実の世界は一つ平面に並んでおりながら、どこも接触していない。そうして現実の世界は、かように動揺して、自分を置き去りにして行ってしまう。甚だ不安である。(夏目漱石『三四郎』新潮文庫)

 『三四郎』を読むのは大学のとき以来で、当時はほとんどおもしろいとは思わなかったと思うのだが、ぜんぶ読んだところをみると、じつは、おもしろいと思ったのだろうか。それとも、むかしは今より忍耐づよくて、おもしろいと思わなくても、読めたのだろうか。いずれにしても、今は、わりと、おもしろいと思う。
 東京という都市と、「都会的」な人々と、大学生活。はじめて出くわすものごとに動揺しつつも平気なふりをしていたことなどが、思い出された。
 先日、たまたま、岩元禎という人を知ったことから、『三四郎』が読みたくなったのだった。昨日、少しだけ古本屋で店番した帰りに、何か物足りない思いで立ち寄った、TSUTAYAで買った。文庫本ばかり、3冊買った。大学一年生のころも、こうやって所在なく、本屋で文庫本ばかり買っていた。