2019年6月16日日曜日

拾い読み日記 133


 一昨日みたジョナス・メカスの「ロスト ロスト ロスト」と昨日の幸福なできごとがまじりあっている。

 海辺の記憶。
 黒猫の鼻の湿り。
 笑い声、やさしい声。
 雨上がり、鳥の囀り。
 庭の葉や花。
 夜明けの静けさ。

 チェルさんの展示にいったら、もう終わっていた。日時を勘違いしていたのだ。奥のバーにいた正一さんから声をかけられ、するすると、いっしょにのんだ。
 作品はみられなかったけれど、せめて話すことができて、よかった。純粋で熱い方だな……と、すこし、緊張した。つくることといきることに、そのふたつの関係に、噓のない方、といったらいいのか。

 三鷹に着いて、疲れていたので帰ろうかと思ったけれど、お腹がすいていたので、夫と藤田くんがのんでるかな、と、鳥しげに向かったら、あんのじょう、いた。博多うどんをいっしょにたべた。
 藤田くんが井上多喜三郎の詩集をみせてくれて、20000円の値付けの文字にどきどきしつつ、ページを繰った。すると、鳥しげのご主人が、ちょっとみせてもらえますか、と小声でいうので、とまどいながらも本をわたすと、すこし読んで、あまりこういうものは読んだことがないけれど、おもしろい、といわれる。それからぽつりぽつりと、詩を、声に出して読まれた。低い声で、呟くように。
 不思議な瞬間だった。どきどきしたひとときだった。ひとの秘密をこっそり聞いてしまったような。切りとって、綺麗な箱にしまって、いつまでも残しておきたいような。