2019年6月5日水曜日
拾い読み日記 129
なにかを見るとき、ほんとうにそれを知るには
ずっと見つめなければならない。新緑を
見わたして、「森の春を見ました」とは、とても
いえない。見ているものになり切らないと。
暗い地面を蛇のように、ひっそりと這う茎や、
尾羽みたいに広がる葉、その葉のあいだの
小さな静けさにまで深くはいって、時を
忘れるほどでなければ。静けさがわきおこる
その奥の、大きな静けさにもふれて。
ジョン・モフィット「なにかを見るとき」。アーサー・ビナード/木坂涼編訳『ガラガラヘビの味 アメリカ子ども詩集』(岩波少年文庫)より。ときどき、読み返す。この詩集のなかで、もっともすきな詩。
しずかな時間、ゆっくりする時間が必要だ、とかんがえているところに、素敵なおくりもののように、ある小冊子がとどいた。みずみずしくて、さわやかな冊子だ。ゆっくり読んだら、手紙を書こうと思う。
夕方、小さな男の子の声がした。「てんとう虫が、てんとう虫が」、そう大声でいったあと、しばらくして、泣き出した。