2019年3月23日土曜日

拾い読み日記 100


 イチローの引退会見を見たせいか、野球の本が読みたくなった。昨日から『白球礼讃 ベースボールよ永遠に』(平出隆)を読んでいる。
 野球へのなみなみならぬ愛がみなぎる、とても感動的な本だ。野球の魅力の核心に迫っていこうとする冒険譚のようでもあり、なかなか途中でやめられない。このところ、読書における集中力がまったくなく、拾い読みしかしていなかったが、この本は、もう、3分の2くらい読んだ。続きを読みたい、どうなるか知りたい、という、読書のたのしみのひとつを、ひさしぶりに思い出した。

 大切なのは、大気の中での実践の歓びである。ボールを投げること、投げられたボールを打ち返すこと、それに飛びつくこと、ボールが転々とするあいだに塁を走りめぐること、そして、それらの与えてくれる始原的な歓びをゆっくりと呼吸することである。

 昨日の自分と今日の自分とは体調も気分もちがうのだから、ちがう本を読みたくなるのはあたりまえだと思う。それでも同じ本を読み続けられるというのは、「物語」の力だろうと思う。顔を上げて、本の外に戻ってくるときも、物語はすぐそばにあって、不安定な身を、ささえてくれるようでもある。

 今日は、また冬に戻ったみたいな寒さの日。雪か雹が降ったらしい。近所の桜が、ちらほら咲いていたのを見た。ほんとうに咲いてる、と思った。