やがて東の空があかるんで、あまい蜜の色になる。それから、まるい太陽が顔をだした。橙にクリームをとかした色。バターに朱を一滴いれた色。このような色を、どうしたら正確に記憶できるのか、そのすべを知りたい。
珈琲を淹れるまえに、詩集をひらいた。霧から連想した詩人の詩集。「人生は、/きみがいとおしむ人生は、ひとつの長い誤謬で、/(みじかくて、金色で、ほんのまぼろしで!)」(ウンベルト・サバ「第一のフーガ」より)
「(みじかくて、金色で、ほんのまぼろしで!)」が、太字になっている。ふいにやってくる奇蹟のように綺麗なものは、すぐに消えていく。生そのものが、そうなのだ、ということが、しだいにわかりはじめたから、書くことを、ためらわなくなったのかもしれない。
