ソル・ルウィット展「オープン・ストラクチャー」をみた。開かれた構造/作品、開かれたアイデアにふれることは、ここちよいことだった。緻密に設計され、完璧にレイアウトされている作品も、手で制作されているから、揺れやずれやぶれがあって、そこに、「温度」や、「風」を感じる。息ぐるしくない。その開放感は、ルウィットの、このような言葉にもあらわれているだろう。「アイデアは一度でも表されたなら、すべての人の共有財産になると信じている」。これらの作品=アイデアは、すでに、これをみた、自分のものでもある、ということ。眺めのよい広場にいる気分になって、見て、歩いた。
「一万本のランダムな直線、長さ約4インチ(10㎝)、10フィート(300㎝)四方の枠内に描かれる」ウォール・ドローイングの前に立つ。見上げると、線はあたまから降りそそぐようだった。雨や雪に降られることはあるが、線に降られたのははじめてで、陶然とする。
「エヴァ・ヘスに宛てた手紙」を、何度も読んだ。
あなたを信頼している。たとえあなたが自分で自分を苦しめているとしても、あなたの仕事はとてもいい。いっそ「ひどい」仕事——思いつくだけの最悪な仕事をして、どうなるか確かめてみればいい。大事なのは肩の力を抜くこと。全部どうなっても構わない——世界に対して責任を背負うことはない——責任を背負うべきは、ただ自分の仕事だけだ——だから、そう「する」こと。(展示図録より)
無数の、垂直な、まっすぐでない線が描かれた壁の前では、とりとめがない、とほうもない、と思った。はてしないものを目の前にして、言葉をなくした。エヴァ・ヘスの早逝を受けて構想されたというあの作品の無数の線が、このような手紙を読んだあとでは、エヴァ・ヘスへの、言葉にならない、おわりもない、追悼の文字のつらなりにも感じられる。
