なおす、のはどうやるのです?
手術です。
シリツ! シリツですか?!(とは、わたしはいわなかったけど、そのとき、突如、つげ義春の『ねじ式』の女医が、「シリツします」といったのを思い出していたのだ。)
シリツ! シリツですか?!(とは、わたしはいわなかったけど、そのとき、突如、つげ義春の『ねじ式』の女医が、「シリツします」といったのを思い出していたのだ。)
手術の前日に、藤本和子『砂漠の教室 イスラエル通信』を拾い読みした。切羽詰まっていたので、手術や、麻酔や、検査について書かれたところばかり読んだ。
婦人科の、内診台に吊してあるカーテンについて。「配慮」によって、上半身と下半身は分けられる。切り離される。診察室は、個室ではなく厩のようなつくりになっているから、「コレ、ダレ?」と、医師にいわれたりする。わたしはわたしではなく、ひとつの下半身になり、医師のほうは、顔のない、手になる。いや、手、というのは、まだ人間的だ。「あいつらは顔のない、ゴム手袋をはめた手だ。」
婦人科の、内診台に吊してあるカーテンについて。「配慮」によって、上半身と下半身は分けられる。切り離される。診察室は、個室ではなく厩のようなつくりになっているから、「コレ、ダレ?」と、医師にいわれたりする。わたしはわたしではなく、ひとつの下半身になり、医師のほうは、顔のない、手になる。いや、手、というのは、まだ人間的だ。「あいつらは顔のない、ゴム手袋をはめた手だ。」
手術を振りかえって、もっとも恐怖をおぼえた瞬間は、手術室に入ってからの確認のときだった。
お名前は。「コンノノブコです」(正直にいえば、これがわたしの名前、という実感はあまりなく、ただ、保険証に刷ってある名前を便宜的に使用しているに過ぎない)。手術する部位は。「タンノウです」。それから、手首につけられたリストバンドのバーコードを、バーコードリーダーで、「ピッ」と読み取られる。レジに持ってこられた商品のようなわたし。これからからだを切られて内臓を出される、その前に耳にする音にしては、軽すぎる気がした。