今日もプールはにぎわっていて、たのしげな声にこころがあかるむ。日がしずむころ、ようやく、部屋から外へ出た。北の空にはコーラルピンクの雲がたなびき、西の空では三日月がやさしくかがやいていた。金色でも銀色でもない、生成り色の光。やわらかできよやかな光。
ポール・オースター『オラクル・ナイト』を読み終えた。
人間が人間に対してそれをやったんだ、これっぽっちも疚(やま)しく思わずに。それが人類の終わりだったんだよ、ミスター高級靴さん。神が人類から目をそむけて、永久に世界から去ったんだ。そして俺はそこにいて、自分の目で見たんだ。
小説の中の小説で語られた言葉は、真実であり、現実だった。力をうばわれ言葉をうしなっていた。今は、力をあたえてくれるものを必要としていて、そのひとつは、「本」であり、こういうときに、なにより、本とは、本以上のものだ、と感じる。