2022年1月30日日曜日

拾い読み日記 268


 書かないでいると、書けなくなる。どうやって、どうして、書いていたのか、よく、わからない。言葉が遠くにある感じ。話すときは、言葉を意識していない。書くときにはじめて、「言葉」が迫ってくる。そうしたら、言葉が、うまく、使えなくなる。使う、というようなものでなくなる。
 書けないときは読めないときで、このところ、まともに本が読めない。読めないときは、やみくもに、目についた本を開くことになる。ジャック・デリダ『盲者の記憶』は、夫の本棚から。ディドロの手紙が引用されていて、奇妙に惹かれ、そこばかり読んだ。

 (……)闇のなかで書くのはこれが初めてです。この状況は私に、とても優しい想いをいくつも吹きこんでくれるはずです。それなのに、私が感じるのはたった一つ、この闇から出られないという想いです。あなたの姿をひとときでも見たい、その気持ちが私を闇に引き留めます。そして私は話し続けます、書いているものが文字の形をなしているかどうかもわからずに。何もないところにはどこにでも、あなたを愛していると読んでください。

 何もわからなくても、書いたり、作ったりを、続けてみようと思う。いつか、何か、今はわからないことが、わかるかもしれないから。

 今朝、二度寝の前の妄想のなかで、本のページの白い部分が布みたいにおおきくひろがり、やわらかく波うちながら降りてきて、自分をすっぽりとつつんでくれた。