2026年9月5日土曜日

拾い読み日記 378


 エクリチュールとは、我々の主体が逃げ去ってしまう、あの中性的なもの、混成的なもの、間接的なものであり、書いている肉体の自己同一性そのものをはじめとして、あらゆる自己同一性がそこでは失われることになる、黒くて白いものなのである。(ロラン・バルト「作者の死」)

 この「黒くて白いもの」が気になって、しかたがない。「黒くて白いもの」に惑わされて、こんなにもたやすく、ものを書いてしまっているのだろうか。

 夏の終わり、秋のはじまり。昨夜、また階段のまんなかであおむけになっている蟬を見かけた。これはどうみてもしんでいる、と判断して、端に移動させようと羽をつまんだら、生きていて、飛んでいった。前の個体と同じような軌道で。さすがに二度目なので、声は出なかった。しかし、心臓にはわるかった。この場所でねるのが、蟬のあいだで、はやっているのか。あるいは、触れるから、よみがえるのか。