2021年2月1日月曜日

拾い読み日記 226

 
 昨日の午前中、散歩から帰ってきて窓を開けると、あたたかな日差しとやわらかな風がはいりこんできて、なんとなくなつかしい、いいにおいがした。なんのにおいか、思いだせそうで思いだせなくて、動物みたいに、しばらく鼻をくんくんさせていた。ふと、すきな俳句があたまをかすめた。

 だれかどこかで何かさやけり春隣  万太郎

 耳のあたりがくすぐったくなるような句だな、と思う。耳も、鼻も、おなかのあたりも。みんなが春のうわさをしているみたいだ。ことばを持つもの、持たないもの。ささやきは遠くから、近くから、さらさらと風にのって流れてくる。