2021年1月30日土曜日

拾い読み日記 225

 
  見あげてみると、ひらり、ふうわり、ほそながい紙が舞いおりてきて、とっさに、あれをうけとめなければ、と思った。落としてはいけない、と。どうしてだか、必死といってもいいくらいだった。
 うけとめて、ひろげて、手のなかにあることばを読んでみた。

「女というものは、心を見せないものだと思っていた。歌やことばで飾り、衣装で包んで、時には裏腹なことを言う。だが、あなたは違う。まるで、じかに心を抱いているようだ——」

 向田邦子が書いたドラマ「源氏物語」の台詞らしい。
 向田邦子への興味は少なくなって久しいけれど、たぶん、降ってくることばがほしくて、展示にいったのだった。
 いろいろなことを思い出しながら、やみくもに歩いていると、神社にいきあたり、お参りしておみくじを引いた。その日の夢と同じ言葉が書いてあった。不思議な気もしたし、当然な気もした。
 誕生日の出来事。
 20年ほど前に一年だけ通ったオリンピアアネックスビルはなくなっていて、交差点から見上げる空がひろかった。