2011年12月30日金曜日

今年のかたみ






ようやく、溜まりに溜まったものたちの片付けをしています。「がさつにせかせかしないで、しっとり落着いた気持にと心掛け、一つ一つに、ここが区切りなのだ、ここで一段落おわるのだ、と思い思い」(幸田文)。この一年に、というより、これまでにあったことや、会った人たちのことを思い出しながら。もうすぐ、長い旅に出る人のような心持ちで。


3月、大きな喪失を経て、なにもかもが揺らいでしまった。不安と虚ろな気持ちを抱えて、ふわついた足取りで、たくさんの人に会いました。幸せな時間がひときわ、夢のようで。けれども、時には自分をコントロールしかねて、空回りしたり、かっとなったり、はしゃぎすぎたり、しごとしすぎたり、眠れなかったり、へんなところで泣いてしまったり。身近な人たちには、さんざん迷惑と心配をかけました。


来年はもっと静かな落ち着いた気持ちで、シンプルに生きたい。頭も身体もクリアにして、与えられたしごとを全うしたい。そう思っているのは今だけかもしれないけれど。そんなことが叶うなら。


いろんなことが、やるべきことがまだぜんぜん終わっていなくて、そういう場合ではないのはわかっているけれど、明日はなんとしても、映画を観にいきたい。あの映画のあの最後の台詞を、今、聞きたい、聞かなければ。今年のかたみに。そんな切実な思いを、すこし持てあましつつ、いってきます。


どうぞよいお年を。



追伸 オサレツが不安そうなのは、年賀状をまだ刷っていないから…だよね

2011年12月18日日曜日

おわりとはじまり





書肆サイコロでの「活版とことば」展が終わって一週間、ようやく落ちついてきました。


自分の作ったものたち、好きなものたち、それらを並べた展示空間を、わざわざ足を運んで見にきてくださる、見ていてくださる、その様子を見ているだけで、しあわせな気持ちにくるまれるようでした。こうして思いだしている、今も。


開いた頁が鷗や蝶のように、あちこちでひらりひらりと。

もの読むひとは、われを忘れているせいか、無垢で無防備で、愛らしいと感じます。うつむいて、目を伏せて、眼と手と指を、動かして。どう読んでいるのかな?と、近くにいるのに遠い気がするその人のあたまの中を想像するのも、また愉しいこと。言葉が目から心に、滞りなくうつっていって、内部でなにかいい感じのできごとが、起こっていたらよいですが。





6日間通ったせいで、すっかりあの場所に、あの場所で会った人たちに、情がうつってしまい、まだ喪失感をひきずっています。しつこい性格。それぞれの人たちの表情や身振りや声がぼんやり浮かんでは消えて、行く手を照らす灯りの明滅のようにも思えます。


本が好き、というくせに不器用ゆえに本は作れず、本のようなものばかり作ってきました。本にあこがれ、本を夢みる、永遠に本になれない紙のかさなり。どうしたらもっと本に近付けるのか。いつか、本のミューズの蹠をくすぐることは、できるでしょうか。背のびして。


終わったことはさびしいけれど、(とびきり)おもしろい友人がたくさんできたような気がして、またなにかあたらしい、心躍ることごとが始まっていきそうな予感がしています。


どうもありがとうございました。

これからも、社員一同、拾い読みに励んでまいります。

またお会いできますように。





追伸 社員ふえました

2011年12月8日木曜日

「活版とことば」開催中です





活版とことば展、開催中です。


初日はあいにくの天気のせいかびっくりするほどお客さんが少なくて、オサレツと二人で、どうしよう……と不安と寒さにうち震えておりましたが、二日目の昨日はお客さんがひきもきらずにいらして、持っていったお仕事の書類(校正刷り)がまったく読めなかったんでした。仕事はまったく進まなかったけれど、嬉しい出会いと再会がたくさんの、しあわせな一日となりました。お越しくださったみなさま、どうもありがとうございました。


期間中は毎日高円寺に出勤いたしております。ぜひぜひ、足をお運びいただけたら幸いです。書肆サイコロ、とてもゆったりとしていて、心を鎮めてくれる空気が流れています。ものを読むのにふさわしい場所。刷られたことばたちは、静かにひそやかに、だれかの目に触れる瞬間を待っています。



追伸 きょうも寒い…

2011年11月30日水曜日

十二月





高円寺での「活版とことば」展に備え、先週土曜日の三の酉に富岡八幡宮へ、社員こぞって出かけてきました。(絵はがき部長もお付き合いくださりありがとうございました。)写真はみんなで熊手に見入っているところでしょうか。どさくさにまぎれてサンタまで混じってますが。


……て、なんだか自分、ひまそうです。


新作は尾形亀之助『十二月』です。しかし尾形亀之助の詩にどっぷりと浸っていると、もうどうでもいいか……という気がしてくるので、なかなか順調に進みません。「空は見えなくなるまで高くなつてしまへ」(「愚かなる秋」)とか呟きながら、日がな一日薄暗い部屋で寝そべっていたい誘惑にかられますが、なんとか気分転換してモチベーションを上げながら、今週中には完成させたいと思います。高円寺に見にきていただけたらさいわいです。




青山ブックセンターでのブックフェア、本の島々のほうもいろいろ細かい動きがありますので、ぜひ引きつづきよろしくお願いします。くわしくは、本の島ツイッターで。


ブックファースト新宿店でのブックフェア「名著百選2012」も12月4日(日)のようまでです。京都で出会いそこねた、あの方の本を選んでいます。



追伸 竹尾の帰りに東京堂で『ぽかん』を探しまわったけどなかった……ふくろう店でしたか…

2011年11月26日土曜日

New Year Greetings 2012 へのお誘い


年賀状の準備をするのが年に一度の大きな愉しみになったのは、デザインに興味を持つようになったころからです。そのころは、自分の好きなものを好きなように形にして人に見てもらう機会がほとんどなかったので、毎年とっても力を入れて作っていました。この紙は高いからだめ、とか、もっと文字を大きくして、とか、地味すぎる、とかいわれないなんて、夢のよう。とびきり風合いのいい紙にごく小さな文字や薄い色で印刷してみたりして、自由を満喫していました。あまりもらう人のことは考えてなかったかもしれない。今から思うと、わたしは本当はこういうものが好きなのです、というささやかなアピールだったのかもしれません。年の初めから、なんとも暑くるしいやつです。


今は「ヒロイヨミ」という場所があるので、そんなに年賀状で主張しようとは思いませんが、でも、(著作権を気にせずに)好きなことばを選んで、好きな紙に、好きなレイアウトで、好きなインクで印刷できるのは、やはりこころ躍ることに変わりはありません。そう、なんだかんだいっても、「年賀」というお題で、ただ言葉や文字や紙や色と戯れたいだけなような気もします。


もちろん、年賀状の愉しみは作ることのみにあるわけではありません。むしろいただく方にあります。活版を始めたころから、毎年あっと驚く力作が届くようになりました。ちょっとどうかしてるのでは、というくらい凝ったもの、嫉妬してしまうほど素敵なもの、額に入れて飾っておきたいような年賀状……。年賀状に手間をかける人は、きっと、ものを作るのが芯から好きな人。作りたい、見て(よろこんで)ほしい、そういう気持ちをいつまでも忘れない人が、わたしは大好きなのです。もちろん、自分もそうありたい。


こうして好きなことをしていられること。たくさんの友人に会えたこと。新しい年を迎えられるということ。今年は、いや、たぶんこの先ずっと、特別な気持ちで年賀状を作ることになりそうです。今年会った人に。会わなかった人に。もう会えないけどいつか会うかもしれない人に。人ではない、なにものかに。どんなふうに新年のご挨拶をしようか、思いをめぐらせているところです。


前置きが長くなりましたが、来年もまた、西荻窪・みずのそらにてNew Year Greetings展を開催いたします。作ることを仕事とされている方、もの作りが好きな方に、ご参加いただけたらうれしく存じます。年賀状を一枚、ギャラリー宛てに送っていただくだけで結構ですが、事前に一度参加の意思をお知らせくださったら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。


New Year Greetings展


会期:2012年1月7日(土)〜1月15日(日)

会場:ギャラリーみずのそら 〒167-0042 東京都杉並区西荻北5-25-2

   http://www.mizunosora.com/

企画・会場構成:ananas press(山元伸子+都筑晶絵)/CATALYZE DESIGN(山下桂樹)



たくさんの年賀状が集まったギャラリーの中は、ほわほわと湯気が出ているようで、とてもこころがあたたかく、軽くなります。新しい年へ、そっと背中を押してくれているようです。見に来られるみなさんも新年の空気をまとって、なんだかういういしく、かわいらしく感じたり。年が変わる、というのは、ふしぎな、すてきなことです。



追伸 今日は計5匹の猫に会ったラッキーデー

2011年11月15日火曜日

活版とことばin高円寺





ヒロイヨミ社「活版とことば」


参加者=赤井都ananas press大崎善治サイトヲヒデユキ二月空、文京れんげ社、北極書店、本の島絵はがき部、山田理加、ユニバーサル・レタープレス


日時=12月6日(火)〜12月11日(日)

13時〜19時まで(最終日18時まで)


会場=書肆サイコロ(JR高円寺駅より徒歩9分)


9月にかまくらブックフェスタで開催した展示の巡回展になります。書肆サイコロのサイトヲヒデユキさんに、新たに加わっていただきました。この展示は来年1月に恵文社一乗寺店内の一角でも開催予定です。

参加者の作品については、今年9月のブログ記事をご参照いただけたらと思います。


ヒロイヨミ社は、鎌倉では新作を出せなかったので、今回は小さめの冬らしい本(のようなもの)を作ってみたいと、計画中です。いつもとてもこだわった本作りをされているサイトヲさんの作品も、ぜひ楽しみになさってください。(さりげないプレッシャー)



追伸 眼鏡は似合わないからやめた方がいい、と女子小学生たち(バンド仲間)に口々に助言されました

2011年11月1日火曜日

広報オサレツより





せっかくの1並びの日だからなにか始めたい、とツイッターを始めてみることにしました。基本的にはヒロイヨミ社の内気な広報・オサレツが担当しますが、わたしヤマモトの心内語(ほんとのつぶやきです)もたまに混じると思います。ついでに髭の校閲部長もなにかあったら割り込むかもしれません。ぐだぐだになると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。


オサレツの由来は、『ドリトル先生アフリカゆき』より。唯一無二の両頭動物であるこのオシツオサレツ、見せ物になってドリトル先生を助けるようにみんなからしつこく頼まれても「いやでございます。ごぞんじでしょうが、私は、はずかしがりやで、人に見られるのが、だいきらいでございます。」と二つの頭をやけに振って拒否しているくせに、ドリトル先生を一目見たとたん、お供します、と決めてしまうところなんか、他人とは思えず、大好きです。



追伸 写真はオサレツではなく、ヤギです。Asconaにて

2011年10月24日月曜日

本の島々





青山ブックセンター本店にてブックフェア「本の島々」開催中です。管啓次郎さん、蜂飼耳さん、郷原佳以さん、渡辺富士雄さん、樽本樹廣さん+山川真由子さん、越川芳明さん、桂川潤さん、阿部日奈子さんらに選書をお願いしました。ぜひこの8つの島の連なる様子、棚から吹いてくる気持ちのよい風、店頭で感じていただけたらと思います。本のリストと選者のコメントを掲載した冊子、この棚から一冊お買い上げのお客さまに差し上げます。


この冊子『本の島々』、ヒロイヨミ社山元がデザインを担当しました。表紙にはJAM印刷のツヤプリを、ごり押し気味に試してみました。いやあ、メンバーにはなかなか好評でよかったです。刷り上がってきた日は、うっとりしながら「ツヤツヤしてるね……」「プリッと盛り上がってるね……」と何度も確認し合っていました。


今回は久しぶり、約10年ぶりに原稿依頼も一部担当させていただき、どきどきでした。編集の職を辞したのは、デザインに興味がわいたから……ということに表向きにはなっていますが、実際のところ、原稿依頼が苦手だから、という非常にネガティブな理由もありましたので(当時はメールもあまり普及していませんでしたし)、まあなんといいますか、いい経験ができました。


棚のそばには、昨年BEKAが作った三角の冊子『本の島へ』もありますので、ぜひ読んでみてください。わたしは厚いvol.1のほうに、堀江敏幸さんの『おぱらばん』と須賀敦子さんの『イタリアの詩人たち』について書きました。「ユリイカ」にギューッと小さい文字で詰め込まれた「おぱらばん」を埃っぽい会社で目をチカチカさせながら読んでいたころのこと、堀江さんの連載「回送電車」を本にしたい、と津田さんに喫茶店でいわれた時のこと。このところよく思い出します。あのとき、わたしが「そうですね、堀江さんの文章は、やっぱり本の形で読むのがいちばんいいですものね」といったら、津田さんは目を輝かせて愉快そうに微笑んでくれて、わたしもなんだかうれしくなったことを覚えています。まるで、よくできたね、と頭をなでられた子どものように。



さて、今年もブックファースト新宿店のブックフェア「名著百選」に参加させていただき、「この一冊が私を支えてくれた」というお題で一冊選びました。わたしはまだ行ってませんが、どんな本が並んでいるのか、とてもたのしみです。



目白のひぐらし文庫では『Traces 痕跡』の取り扱いが始まりました。ブログでは、「痕跡アート」として紹介していただき、うれしいかぎりです。昨年の「旅の栞」ではさほど売れませんでしたが、これを見てヒロイヨミ社のことを気にしてくださるようになった方(もえぎさん)もいたと知り、作ってよかったなとしみじみ思います。ここで取り上げたドナルド・エヴァンズを知ったのは、もちろん平出さんの本で、です。



「旅の栞 vol.3」、22日に無事終了しました。ご来場のみなさま、どうもありがとうございました。 



追伸 黒いベーグルを出したら「たどん?」といわれた朝

2011年10月13日木曜日

旅の栞vol.3はじまりました





旅の栞vol.3、はじまりました。


ananas pressが新たに作った『Coffee Break コーヒー・ブレイク』という栞のセットは、世界のあちこちに住む友人たちに、それぞれの国の言葉で「コーヒーいかが?」と書いてもらったものです。絵もいっしょに描いてもらいました。全部で12枚、紙もばらばらでおもしろいですよ。





今年もすてきな栞があつまりました。しまりす(石松)さんのあっと驚くキュートな巨大栞、あきさんのロマンチックなおさかな栞、アベちゃんの詩情あふれる青の栞。riccaとタイガーブックスさんによる、おもしろそうな古本もたくさんです。Cat's Cradleのごはんとおやつ、眺めているだけで楽しい気持ちになってくる本棚とあわせて楽しんでいってください。


それにしても……こうした展示のDMを送るのっていつも時間がかかります。しかもこのところいろんな作業に追われていて、後まわしになってしまいました……。

グループ展の案内状の宛名をカフェで書こうとして書きあぐねる宇佐見英治さんのエッセイ、かつて読んで強く心に残っているのは、自分もまったく同じように感じているからです。


この人には気の毒だから、この人に見られるのは恥ずかしいから、奴は馬鹿にして見に来まい、そう思って名を拾ってゆくと限られる。ときどき書く手をおいて筋向かいの美しい娘を見ると、苺の唇から煙草のけむりが上っている。十二、三枚ほど書いて疲れた。また彼女を見た。葉書はまだまだ残っている。


「案内状」 宇佐見英治『三つの言葉』(みすず書房)より


はてどうしようと思ったのち、ふとシャルル・ボードレール様と書いてみた宇佐見さん。スタンダール、曹雪芹の名も。……その手があったか。それではわたしもブルーノ・ムナーリ様、と書いて出してみたいところです。生きてるひとたちはみんないそがしそうだしなあ……。いやいや、そこをなんとか、万障お繰り合わせのうえ足をお運びいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。



追伸 周辺情報〜會津八一記念博物館演劇博物館などもおすすめです

2011年10月2日日曜日

「旅の栞vol.3」のおしらせ





かまくらブックフェスタ「活版とことば」展、ご来場いただいたみなさま、どうもありがとうございました。

始まった、と思ったら、あれっという間に終わってしまった二日間……。たくさんの人にお目にかかってお話しして、わたし自身もたくさん本を買ってほくほくでした。本を作る人には、独特の雰囲気があって、引きこまれてしまいます。なかでも、『書紀』と『書紀=紀』と『stylus』をvia wwalnutsのブースで購入したときの平出隆さんとのふしぎなやりとり……。忘れがたいです。いつだったか平出さんが新聞に書かれていた言葉、「すべての書物がスキャンされようとしている時代、それはプライヴェート・プレスにとっては挑みがいのある時代である」。こちら切りとって社訓にしておりますので、お目にかかれてとってもしあわせでした。


さて、「活版とことば」展、もうすこしゆっくりと、ゆったりと見ていただきたく思いまして、今冬に都内でも開催する運びとなりました。くわしくは追ってお知らせします。


気がつけばかまくらブックフェスタからもう一週間……季節の変わり目のせいか、はたまた年のせいか、疲れ(あるいは余韻)がなかなか抜けません。ともいってられず、今月はまた別の展示会にananas pressとして参加します。


旅の栞 vol.3 〜古本市と活版アート

10月12日(水)〜10月22日(土)11:30〜22:00 

早稲田・CAT'S CRADLEにて

※18日(火)休み、最終日の展示は21:00まで


古本市プロデュース=古本ユニットricca/古本店タイガーブックス

活版アートによる栞=阿部真弓/石松あや(しまりすデザインセンター)/ananas press(都筑晶絵+山元伸子)/松本亜季


展示のお知らせとして作ったフリーペーパーには、出品予定の本の紹介や、参加者による旅や本にまつわる文章が載っています。亜季さんの紙版画とあわせてお楽しみいただけたらうれしいです。ananas pressは、世界のあちこちに住む(おもにaの)友人たちに協力してもらって、本の栞/栞の本を作っています。しかしあと一週間ちょっとでできるのかどうかきわどいところで、さらには紙屋さんの棚卸しだとかで紙の到着も遅れ、白髪も増える一方の今日このごろ。きのう、今年さいしょの金木犀の匂いに、少々あせりました。いつもだったらわーいとうれしくなるのに。



追伸 都電荒川線に乗って逃亡したい…

2011年9月23日金曜日

かまくらブックフェスタ開催





かまくらブックフェスタ、本日開催です。

「活版とことば」展の会場は、ギャラリースペースの隣のカフェスペースになります。なお、トークの時間のみでなく、その1時間前程前から準備のため会場をクローズして貸し切りといたしますので、どうぞご注意ください。


ヒロイヨミ社は、『ヒロイヨミ』珈琲特集と灯台特集、『冬の木』(在庫僅少)、『尾形亀之助詩片』(残り一部)、『Traces』を販売しています。『ヒロイヨミ』バックナンバーも置いています。お手にとってご覧いただけたらうれしいです。


どうぞよろしくお願いいたします。



追伸 搬入してたら、ね、ねこがふらりと遊びにきました!

2011年9月21日水曜日

活版とことば展(つづき)

ananas press

製本作家・都筑晶絵とヒロイヨミ社の山元伸子によるユニット。俳句、短歌、詩、小説、随筆など、さまざまなジャンルの文芸作品に描かれた「水」と「空」をフラグメントにして瓶に入れた『水の空』を出品します。言葉と言葉をつないだり並べたり重ねたりずらしたり、気の向くままに位置を変えてみると、思いがけない風景が見えてくるかもしれません。


大崎善治

Imakokoro tarot deck』(カードと冊子)、点字のカード3種類、そして新しい作品『Futatsu no Kimi』を出していただきました。「レタープレスキット」という機械を使ってエンボスを施した点字のカードは、目で読む言葉と手で読む言葉が、一枚の紙の上に共存してやわらかに響き合っています。とりわけ白の凹凸、その陰影に心惹かれます。新作『Futatsu no Kimi』は、昔から好きな歌の歌詞を、自ら印刷されたもの。歌の内容だけでなく、文字のかすれや刷りムラもまた、人の声にも似たあたたかな雰囲気を醸しています。


文京れんげ社

大木陽子さんと宇佐美智子さんによるユニット文京れんげ社は、今回はじめて活版印刷に取り組まれました。「食べる×言葉」をテーマにした、できたての湯気が見えそうなノートやカードたち。「舟のような月を見た日のピザ」「白い猫と歩いた日のおやつ」など、たのしそうなおいしそうな言葉がならんでいます。レシピといっしょにお楽しみください。だれかといっしょに(あるいは一人で)、ものを食べるなごやかで幸せな時間が恋しくなるようなものばかりです。 


山田理加

果物、スパイス、鳥、花のカードを展示販売します。雷鳥、小瑠璃、石叩、玄鳥、小啄木鳥、など、ただそれらの名前のみが、漢語で整然と、標本箱に収められたものたちのように並んでいます。日本語と活字の美しさを、あらためて伝えてくれるカードです。年賀状として作られた「叔母と正月」では、ただいくつかの言葉が並んでいるだけなのに、まるで一編の小説を読んだような、静かで深い余韻が味わえます。


ユニバーサル・レタープレス

台東区蔵前の小さなレタープレス工房、主宰するアートディレクターの関宙明さん(ミスター・ユニバースは、「港の人」で刊行されている活版印刷の詩集や歌集の装幀も手がけておられます。今回お預かりしたのは、『やまなし』『雪渡り』『風の又三郎』など、宮沢賢治の童話のことばを印刷したもの5種類。作品から解き放たれて、色とりどり、思い思いの衣をまとった言葉たちが、紙の上でリズミカルに踊っています。「キックキックトントンキックキックトントン」(『雪渡り』)。つい身体に声に、のせてみたくなります。



追伸 無事に帰ってくるかしら

活版とことば展


かまくらブックフェスタ、活版とことば展に参加していただくみなさんとその作品について、ご紹介します。


赤井都

豆本作家として活躍されている赤井さん。『豆本づくりのいろは』『そのまま豆本』(河出書房新社)の著書もあります。今回出していただくのは、『夏から春へ』という和綴じの本です。石州春雨紙、土佐土紙などのめずらしい風合いの和紙が使われていて、本をさわる、めくる悦びを存分に味わえます。山猫やさんの木版もとても愛らしく、ページごとにちがう色で刷られているという、贅沢な一冊です。本と季節と、だれかのことを想いながら、ゆっくりと読んでみてください。


二月空

活字カードには、「ミ スミ ソウ」「コップをもってくる。」「保線」「on the bridge」「K P」などなど、言葉が二つ三つ刷られています。それらをじっと見つめていると、意味が溶けだしてきて頭の中がいいかんじにもやもやしますが、紙面はあくまで凛として美しいのです。「詩集の1ページを眺めるように手に取ってもらえたら」と作りつづけられているカードは、全部で18種類。紙の色も、白、グレー、臙脂色、黄土色、暗緑色などバリエーションがあり、組み合わせてみるとまたちがった世界が立ちあらわれます。


北極書店

ツバメ活版堂の知り合いの北極書店さん。お店はないそうで、訪問販売のみだそうです。謎の部分が多いのですが、そこがまた魅力のひとつ。今回は、読書の最中、気になった言葉をメモしておくための「かきとめて栞」や書皮(カバー)、喫茶部のコースターなどを出品していただきました。それらの絵も文字も紙もどこか懐かしい雰囲気を漂わせ、北極書店に足しげく通った遠い日々がかつてあったような気がしてきます。


本の島絵はがき部

かつて中島敦が赴任先の南洋の島から幼い子どもに書き送った手紙の言葉をもとに、新たに絵を加えて、絵はがきセット『島からの手紙』を作りました。文字は活版印刷、絵はプリントゴッコです。本の島に関してはこちらのブログツイッターをご参照ください。絵はがき部は、そこから派生したゆるやかな集まりです。主な活動は絵はがきをやりとりすること。部長が描く海や雲や動植物は、のびのびとたのしそうで、ちょっとへん。島への想いがつのります。


(つづく)



追伸 もうあさって?!  

2011年9月14日水曜日

かまくらブックフェスタ



今月23日、24日に開催されるかまくらブックフェスタに参加します。以下、ブックフェスタのブログより転載します。


+ + + + +


923日(金・祝)、24日(土)の二日間、緑豊かな鎌倉のお寺の一画で、本のお祭りを開きます。独自のポリシーをもって本や活字や言葉の活動をする出版社や出版者、書店など、本にまつわるいろんな活動をする人が集まって自慢の本を販売します。選りすぐりの本、ここでしか出会えない本、新しい本、古い本、楽しい本、美しい本……そして、おいしいお茶や軽食もご用意しています。


1回のテーマ「鎌倉、ことば、活版印刷」
昔から本となじみの深い街〈鎌倉〉で、〈ことば〉を大切にし、文字や造本にこだわった本をてがける出版社(者)や書店などが集まり、その作品と活動を紹介します。また本を作るうえで大切な文字と印刷について知るために、〈活版印刷〉の魅力を伝えます。


9
社(者)による本の販売はギャラリースペースで、cooking eating studio によるお茶や軽食の販売と本の販売、「活版とことば」展、およびトークイベントはギャラリー隣のカフェスペースでおこないます。


★本の展示販売
【出展者】
 via wwalnuts
 四月と十月
 書肆くさびら堂(古本ユニットricca
 たらば書房
 ナナロク社
 real arena(リアル・アリーナ)
 編集グループSURE
 サウダージ・ブックス
 港の人

★特別展示
 ヒロイヨミ社 presents「活版とことば」展

★お茶・軽食の販売
 cooking eating studio(*本の販売も行います)

★トークイベント
 ◎923日(16時〜18時)
 「短歌と写真と活版印刷」
  対談 石川美南(短歌)×橋目侑季(写真/活版印刷)
 ◎924日(15時半〜17時半)
 「本と出版のこれから via wwalnuts叢書の試み」
  講演 平出隆(詩人)

*定員 30 名。要予約。入場料は 800 円です。 カフェでの開催につき、お一人様ワンドリンクご注文ください。

日時
9
23日(金曜・祝日)10時〜19
9
24日(土曜)   10時〜18


会場
KAYA gallery
studio
(カヤ ギャラリー・スタジオ)
神奈川県鎌倉市大町1-16-19
*鎌倉駅から徒歩5分。妙本寺の山門の中です。駐車場はありません。

トークイベントのご予約、かまくらブックフェスタに関する お問い合せは....
港の人
248-0014 鎌倉市由比ガ浜 3-11-49
tel 0467-60-1374 fax 0467-60-1375
mail info@minatonohito.jp
(担当・月永)


+ + + + +


ヒロイヨミ社 presents「活版とことば」展
春、雨、虫、雪、島、珈琲、木などをテーマにしたアンソロジー冊子を活版印刷や孔版印刷で制作してきたヒロイヨミ社(山元伸子)の本を展示販売します。あわせて、こうばしい本の匂いを感じさせる作り手の方々によるカードや栞などもご紹介します。「活版とことば」を、印刷の凹みや紙の風合いなどとともに、見て触ってじっくりとお楽しみください。
参加者:赤井都ananas press大崎善治二月空北極書店、本の島絵はがき部、文京れんげ社、山田理加、ユニバーサル・レタープレス


なお、トークイベントの会場が「活版とことば」展と同じカフェスペースですので、その時間帯は貸し切り状態となり展示はご覧いただけませんので、ご注意ください。


+ + + + +


どんな作品があつまってどんな展示になるのか、はたして絵はがき部の作品は間に合うのか(部長、本日おはがき落手しました)、わたし自身ドキドキな今日このごろです。

トークのほうも、両日とも、とてもたのしみ。今後のために、じっくり聞かせていただこうと思います。がんばれ山羊の木! 

かまくらブックフェスタ、東京にお住まいのかたにはちょっと遠出になりますが、ぜひ、足をお運びいただけたらうれしいです。会場でお待ちしております。






そして、「机上の灯台」展、たくさんのご来場、ありがとうございました。うれしいお言葉をたくさんいただき、またがんばって作っていこうという気持ちになりました。いっしょに展示をしたみなさんの、力のこもった素敵なおしごとと、大塩あゆみちゃんのおいしいごはんにも元気をもらって、次の場所に向けてさっそく歩きはじめています。……いや、走らなければ間に合わないかも!


写真は赤井都さんの作品を橋目侑季さんが撮影したものです。いいアングルだなあ…。



追伸 ミナ・ペルホネンに灯台カレーこぼしました

2011年9月6日火曜日

「机上の灯台」開催中です





みずのそらにて「机上の灯台」展、開催中です。


灯台への熱ーい想いがみちみちて、さぞ暑苦しい展示になるのかと思いきや、会場にはとてもさわやかで心地よい、海からの風が吹いています。ような気がするんですが、いかがでしょうか。いいすぎでしょうか。


カフェスペースには灯台関連書(主に石川美南さんの)がいろいろ並んでいて、お読みいただけます。わたしはアルフレッド・ウォリス展と岡鹿之助展の図録を持っていきました。


初日に試食させてもらった大塩あゆ美ちゃんのかき氷、食べ出したら止まらないほどおいしかったです。とくに洞爺のエリモ小豆ったら最高でした。


展示は11日(日)まで開催していますので、どうぞよろしくお願いします。



追伸 10日のライブも楽しみだなあー

2011年8月31日水曜日

ブックスモブロ






 あした鎌倉にオープン予定の本屋さん、ブックスモブロで、ananas press、ヒロイヨミ社の本、『yohaku to hibi to』も取り扱っていただきます。古本とZineと雑貨の店だそうで、活版印刷のものもいろいろあるみたいです。住所は鎌倉市大町1-1-12 WALK大町 2F-D、お店の様子など、くわしくはこちらをどうぞ。


 いよいよ今週土曜からの「机上の灯台」展、そろそろ「ヒロイヨミ」も完成しそう、ふうーやれやれ……というところで世にも恥ずかしい誤植を見つけ、社内に激震が走りました。もう悲しくてやりきれません。ショックのあまり免疫力がガタッと下がってしまったような気がするので、とりいそぎ笑いを……ということで中田ダイマル・ラケット師匠の傑作漫才CDを聞いて気持ちを立てなおし(「僕は迷優」をヘビロテ)、完成に向けてもうちょっと印刷したり、紙を折ったりする予定です。この焦り……、宿題がまだ終わってない子を近所に見つけ出して、励ましあいたいです。


 写真と本文は関係ありませんが、(自分が)癒されるかと。



追伸 近所に「おさわり自由」な猫を発見したとの由

2011年8月25日木曜日

「机上の灯台」展のお知らせ



                         写真=橋目侑季



 来月3日からはじまる「机上の灯台」展について、あらためてお知らせします。


 + + + + +


ひろがる視界の片隅に、ある日ひとすじ光が走る——

「水の手紙/空の余白」につづく、活版印刷+αの作品展。

豆本、タブロー、版画、短歌、冊子など、

それぞれのアプローチで〈灯台〉を目指します。


赤井都

阿部真弓

尾田美樹

山羊の木(橋目侑季・石川美南)/海岸印刷

山元伸子


201193日(土)〜911日(日)

12:0019:00(最終日〜18:00 月・火休


GALLERYみずのそら

東京都杉並区西荻北5-25-2 Tel/fax: 03-3390-7590

http://www.mizunosora.com



【関連イベント】


◎赤井都による豆本ワークショップ

手のひらサイズの、三角形のアコーディオン折り本を作ります。

《日時》94日(日)13時〜15時(受付1245分〜)

《参加費》5000円(2冊作れてかき氷つき)                   

  

◎「岬ノオト」

言葉(短歌、灯台にまつわる文章etc.)と音が紡ぎだす、岬の静かな時間。

《出演》言葉:石川美南(山羊の木)/音:津田貴司

《日時》910日(土)開演19時〜(受付1830分〜)

《入場料》1500


*いずれも、詳しくはみずのそらHPをご覧ください

*なるべく事前にご予約ください(当日参加も歓迎いたします)

 ご予約はみずのそらまで gallery@mizunosora.com


◎期間中、カフェにて大塩あゆ美によるおやつが楽しめます。

910日(土)、11日(日)はあゆみ食堂11時半オープン。(なくなり次第終了)

*詳しくはみずのそらHPをご覧ください


 + + + + +


 制作が大詰めにさしかかると本を拾い読みする気持ちの余裕もなくなってしまうので、手帳に書き留めた言葉を読みかえすことにします。


白の上に、沈黙と静止の上に、君の映画を築き上げよ。


ロベール・ブレッソン『シネマトグラフ覚書——映画監督のノート』より(松浦寿輝訳・筑摩書房)


 家から歩いて20分くらいの場所にある、小さなカフェの小さな本棚にあった一冊。選びぬかれた、愛されているオーラをまとった本たち、その背表紙をつくづく眺め、今日はこれ、と選んだ本のなかにありました。あそこの本棚とロールケーキが、たまらなく好きです。本棚はいつもちょっとだけ変化しているようで、そこがまたわくわくするところですが、ロールケーキは変わらずに、いつでもおいしい、まるくてやわらかでやさしい味で、それは店内に流れる空気にも、店主夫妻の雰囲気にも通じていて……と、書いているうちにまた出かけていきたくなりましたが、そこはぐっとがまんして、白い紙の上に、金と銀の灯台を(プリントゴッコで)築くことにはげみたいと思います。



 「机上の灯台」展、赤井さんのワークショップ、石川さんと津田さんのライブ、あゆみ食堂など企画ももりだくさんです。ぜひ足をお運びいただけたらうれしいです。どうぞよろしくお願いいたします。



追伸 『サンパウロへのサウダージ』もあったよ