年賀状の準備をするのが年に一度の大きな愉しみになったのは、デザインに興味を持つようになったころからです。そのころは、自分の好きなものを好きなように形にして人に見てもらう機会がほとんどなかったので、毎年とっても力を入れて作っていました。この紙は高いからだめ、とか、もっと文字を大きくして、とか、地味すぎる、とかいわれないなんて、夢のよう。とびきり風合いのいい紙にごく小さな文字や薄い色で印刷してみたりして、自由を満喫していました。あまりもらう人のことは考えてなかったかもしれない。今から思うと、わたしは本当はこういうものが好きなのです、というささやかなアピールだったのかもしれません。年の初めから、なんとも暑くるしいやつです。
今は「ヒロイヨミ」という場所があるので、そんなに年賀状で主張しようとは思いませんが、でも、(著作権を気にせずに)好きなことばを選んで、好きな紙に、好きなレイアウトで、好きなインクで印刷できるのは、やはりこころ躍ることに変わりはありません。そう、なんだかんだいっても、「年賀」というお題で、ただ言葉や文字や紙や色と戯れたいだけなような気もします。
もちろん、年賀状の愉しみは作ることのみにあるわけではありません。むしろいただく方にあります。活版を始めたころから、毎年あっと驚く力作が届くようになりました。ちょっとどうかしてるのでは、というくらい凝ったもの、嫉妬してしまうほど素敵なもの、額に入れて飾っておきたいような年賀状……。年賀状に手間をかける人は、きっと、ものを作るのが芯から好きな人。作りたい、見て(よろこんで)ほしい、そういう気持ちをいつまでも忘れない人が、わたしは大好きなのです。もちろん、自分もそうありたい。
こうして好きなことをしていられること。たくさんの友人に会えたこと。新しい年を迎えられるということ。今年は、いや、たぶんこの先ずっと、特別な気持ちで年賀状を作ることになりそうです。今年会った人に。会わなかった人に。もう会えないけどいつか会うかもしれない人に。人ではない、なにものかに。どんなふうに新年のご挨拶をしようか、思いをめぐらせているところです。
前置きが長くなりましたが、来年もまた、西荻窪・みずのそらにてNew Year Greetings展を開催いたします。作ることを仕事とされている方、もの作りが好きな方に、ご参加いただけたらうれしく存じます。年賀状を一枚、ギャラリー宛てに送っていただくだけで結構ですが、事前に一度参加の意思をお知らせくださったら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
New Year Greetings展
会期:2012年1月7日(土)〜1月15日(日)
会場:ギャラリーみずのそら 〒167-0042 東京都杉並区西荻北5-25-2
企画・会場構成:ananas press(山元伸子+都筑晶絵)/CATALYZE DESIGN(山下桂樹)
たくさんの年賀状が集まったギャラリーの中は、ほわほわと湯気が出ているようで、とてもこころがあたたかく、軽くなります。新しい年へ、そっと背中を押してくれているようです。見に来られるみなさんも新年の空気をまとって、なんだかういういしく、かわいらしく感じたり。年が変わる、というのは、ふしぎな、すてきなことです。
追伸 今日は計5匹の猫に会ったラッキーデー