2025年8月22日金曜日

拾い読み日記 331


 受験の夢をみた。国語の試験で、ぜんぜんわからなくて、あせった。紙をめくると草書が出てきて、読めない!と、あたまが真っ白になった。
 どうして今ごろそんな夢をみたのか、といえば、このあいだ卓球の試合の合間に、チームメイトのAさんと、受験の話をしたからだろう。Aさんがいった。「コンノさんは受験なんて遠いことでしょうけど、ぼくはわりと最近のことですから」。Aさんは大学院生で、23歳くらい。おまえだって気付いたら50過ぎになってるからな、と思ったけれど、いわなかったし、べつに、むかっときたわけではない。35年前のことを、そんなに遠いことだと思っていない自分に、気がついたのだった。
 
 きょうが昨日になるのが
 ね ふしぎでしょう

 (野見山暁治『セルフィッシュ』文・田中小実昌)

 『セルフィッシュ』を開くと、いつも、のびのびした気持ちになる。明日がきょうに、きょうが昨日になることを、いつまでもふしぎに思っていてもいいし、35年前を遠いことに感じなくても、べつにいい。表紙が焼けて、しみだらけになった本。それも模様みたいでわるくない。「時間」をめぐる本だから、ちょうどいい。