2025年10月21日火曜日

言葉と冊子と




 ヒロイヨミ社「言葉と冊子」展、福岡県古賀市のナツメ書店で開催中です。
 これまでにつくった冊子の余白と、通じ合うような空間になりました。建物の雰囲気もあり、しずかに、言葉と過ごせる場所になった気がします。こういう空間を、本のなかに、つくりたかったのだなあ、と思いました。
 ヒロイヨミ朗読会も開催できて、うれしかったです。声に出して読むこと。読む声を聞くこと。本と言葉への思いを話し合うこと。ひとつひとつのよろこびを、終わったあとも、感じています。

 翌日は、博多から京都へ。編集工房ノア50周年の会に参加しました。なつかしい人もはじめましての人も、みな編集工房ノアと山田稔さんという作家を深く敬愛しているのが伝わってきて、ほんとうに、すばらしい会でした。みな、すこし、地上から浮いて、ふわふわしていたようでした。(わたしだけかもしれません)
 記念冊子『ノアの50年』を読んでいたら、まだ、じぶんは、ノアのビギナーのような気がしました。みなさんのノアの本への想いが、あたらしい扉になって、これからまた、編集工房ノアの本たちと、深く出会っていけるような予感がします。
 あらためて、50周年、おめでとうございます。

2025年10月19日日曜日

拾い読み日記 337


 どんより暗い日曜日。今日も午後は長めの昼寝。まだ、もとの生活に戻れていない。二週間以上、ずっと気が張っていた。制作と旅と仕事と。張りつめながらも、本をめぐる幸福が、ぎっしり詰まった日々だった。

 昨日は二週間ぶりに卓球をした。靴底の摩擦がつよすぎて、転んで、お尻を打った。ダブルスで強打したあと、うしろに下がるときだった。たいしたことはなさそうだが、まだ、痛い。

 片山令子『惑星』を、開いて読んだ。この部屋は日当たりがいいので、背の黄色が、やや、褪せてしまった。そういえば、本たちは、もっと、色あざやかだった。今は、前より、くすんで見える。年をとったのだ、持ち主とおなじように。でも、くすんだ色も、やわらかい感じで、よいなと思う。
 「あたらしい雲」という詩を読んだ。

 いつもどこかで何かがおこり、胸にしみることがおこり、胸はその出来事のかたちに透けてしまう。
 いつもどこかで誰かに出逢い、誰かは胸にしみてしまい、胸はそのひとのかたちに透けてしまう。

 昨夜はちいさな別れがあった。おそらく相手のほうには、別れ、という意識もないくらいの、ささやかな接触だった。それでも、淋しい、と思い、それをつたえられた自分を思い出すとき、いつのまに、おとなになったのだろう、と不思議な気がした。そういうことを、すんなりいえる人間ではなかったのに。

2025年10月7日火曜日

拾い読み日記 336


 こころもからだも、断片的なもので出来ている。それらはそれぞれのうごきによって、つながったり、はなれたりする。ぶかっこうなモザイク。できそこないのコラージュ。そういうものとしての、じぶん。モザイクの欠片や、コラージュの紙片が、あたまに落ちてくる。おなかかもしれない。それを手でひろって、書き留める。混乱した今、できることは、それだけだ、という気がする。
 
 囚われの身となり、狭い場所に身をかがめて眠るように強制される夢をみた。その強権的な女性は、高校のときの体育教師に似ていた。本の山が近くにあって、そこからグラフィック・デザイナーの作品集を見つけて開いた。そのデザイナーに対しては、現実には、あまり関心がないのに、それでも、夢のなかでは、その「本」と「デザイン」に魅了され、胸が躍り、力がわいてきた。


2025年10月6日月曜日

ある日 読書と断片




 あたらしい本ができました。『ある日 読書と断片』という本です。日付のある散文集で、拾い読みのための本です。印刷・製本は、リソグラフ印刷のJAMにお願いしました。自分で書いて自分で作った本が、綴じられた状態でまとまって届くことは、ほとんどおそろしいようなことで、しばらくは、うまく、ねむれませんでした。でも、よかったです。本文紙もいろいろだったり、インクの濃淡もあったりで、ヒロイヨミ社らしい、ゆるくてかるい感じの仕上がりになりました。本が読みたいのに読めない人に読んでもらえたら、いいなあ、と思います。  
 まずは今月10日からの、ナツメ書店での展示「言葉と冊子」で販売いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。


 装訂の仕事のお知らせです。酒井健著『バタイユとアナーキズム  アナーキーな、あまりにアナーキーな』、法政大学出版局から、10月なかばの発売です。装画について、など、くわしく書いてみたい気持ちもあるのですが、今は、言葉がまとまりません……。おちついたら、何かいいたくなるかもしれません。とても、いい本です。くわしい内容はこちらに。



 「ぽかん」の真治彩さんから声をかけていただき、編集工房ノア50周年記念冊子『ノアの50年』に寄稿しました。エッセイと、アンケート「ノアの三冊」、いずれも短いものですが、参加できて、うれしかったです。10月11日、12日には、恵文社一乗寺店でイベントもあるそうです。わたしも、せっかく西のほうにいるので、博多から新幹線にのって、うかがうつもりです。たのしみにしています。