2011年12月30日金曜日

今年のかたみ






ようやく、溜まりに溜まったものたちの片付けをしています。「がさつにせかせかしないで、しっとり落着いた気持にと心掛け、一つ一つに、ここが区切りなのだ、ここで一段落おわるのだ、と思い思い」(幸田文)。この一年に、というより、これまでにあったことや、会った人たちのことを思い出しながら。もうすぐ、長い旅に出る人のような心持ちで。


3月、大きな喪失を経て、なにもかもが揺らいでしまった。不安と虚ろな気持ちを抱えて、ふわついた足取りで、たくさんの人に会いました。幸せな時間がひときわ、夢のようで。けれども、時には自分をコントロールしかねて、空回りしたり、かっとなったり、はしゃぎすぎたり、しごとしすぎたり、眠れなかったり、へんなところで泣いてしまったり。身近な人たちには、さんざん迷惑と心配をかけました。


来年はもっと静かな落ち着いた気持ちで、シンプルに生きたい。頭も身体もクリアにして、与えられたしごとを全うしたい。そう思っているのは今だけかもしれないけれど。そんなことが叶うなら。


いろんなことが、やるべきことがまだぜんぜん終わっていなくて、そういう場合ではないのはわかっているけれど、明日はなんとしても、映画を観にいきたい。あの映画のあの最後の台詞を、今、聞きたい、聞かなければ。今年のかたみに。そんな切実な思いを、すこし持てあましつつ、いってきます。


どうぞよいお年を。



追伸 オサレツが不安そうなのは、年賀状をまだ刷っていないから…だよね

2011年12月18日日曜日

おわりとはじまり





書肆サイコロでの「活版とことば」展が終わって一週間、ようやく落ちついてきました。


自分の作ったものたち、好きなものたち、それらを並べた展示空間を、わざわざ足を運んで見にきてくださる、見ていてくださる、その様子を見ているだけで、しあわせな気持ちにくるまれるようでした。こうして思いだしている、今も。


開いた頁が鷗や蝶のように、あちこちでひらりひらりと。

もの読むひとは、われを忘れているせいか、無垢で無防備で、愛らしいと感じます。うつむいて、目を伏せて、眼と手と指を、動かして。どう読んでいるのかな?と、近くにいるのに遠い気がするその人のあたまの中を想像するのも、また愉しいこと。言葉が目から心に、滞りなくうつっていって、内部でなにかいい感じのできごとが、起こっていたらよいですが。





6日間通ったせいで、すっかりあの場所に、あの場所で会った人たちに、情がうつってしまい、まだ喪失感をひきずっています。しつこい性格。それぞれの人たちの表情や身振りや声がぼんやり浮かんでは消えて、行く手を照らす灯りの明滅のようにも思えます。


本が好き、というくせに不器用ゆえに本は作れず、本のようなものばかり作ってきました。本にあこがれ、本を夢みる、永遠に本になれない紙のかさなり。どうしたらもっと本に近付けるのか。いつか、本のミューズの蹠をくすぐることは、できるでしょうか。背のびして。


終わったことはさびしいけれど、(とびきり)おもしろい友人がたくさんできたような気がして、またなにかあたらしい、心躍ることごとが始まっていきそうな予感がしています。


どうもありがとうございました。

これからも、社員一同、拾い読みに励んでまいります。

またお会いできますように。





追伸 社員ふえました

2011年12月8日木曜日

「活版とことば」開催中です





活版とことば展、開催中です。


初日はあいにくの天気のせいかびっくりするほどお客さんが少なくて、オサレツと二人で、どうしよう……と不安と寒さにうち震えておりましたが、二日目の昨日はお客さんがひきもきらずにいらして、持っていったお仕事の書類(校正刷り)がまったく読めなかったんでした。仕事はまったく進まなかったけれど、嬉しい出会いと再会がたくさんの、しあわせな一日となりました。お越しくださったみなさま、どうもありがとうございました。


期間中は毎日高円寺に出勤いたしております。ぜひぜひ、足をお運びいただけたら幸いです。書肆サイコロ、とてもゆったりとしていて、心を鎮めてくれる空気が流れています。ものを読むのにふさわしい場所。刷られたことばたちは、静かにひそやかに、だれかの目に触れる瞬間を待っています。



追伸 きょうも寒い…