
まだちょっと先の話ですが、来年の1月に、銅版画家の森雅代さんと二人展をやります。テーマは「冬の木」、森岡書店で開催予定です。森さんは版画を、わたしは言葉を展示する予定です。本(冊子)も作る予定でいます。
森さんとは同じ本屋さんでアルバイトをしていた10数年前からのつきあいで、たくさんの本と映画と音楽を共有してきました。そうだ、(矢野)アッコちゃんを好きになったのも、森さんの影響ではなかったでしょうか。
というわけで今は、この展示のための言葉を集めているところなのですが、あんまり血眼になって探すのもあさましい、拾い読みの神様にきらわれそう……なので、目あての本まっしぐらでなく、あえてふらふらと図書館の書庫という森の中をさまよい歩いていたら、こんな木に出会い、目を奪われてしまいました。どこまでもまっすぐで、飾り気のない言葉が連なります。読み終えて、気がついたら手渡されていた、とても重たくうつくしいもの。抱きかかえたまま、その場から動けなくなりました。
信号機という木
小野十三郎
見知らぬ
ビル街の谷間を
まっすぐに道がながれてきます。
あなたはもうこの世にいらっしゃらないが
わたしには
まだ行く道があるんです。
車はときどき停止しても
道はつづいています。
きょうは渋滞する通りを避けて
走っているのは
倉庫などがあるちょっとさびしいところです。
だが、あなたがいられるところよりも
外景は少しは明るいでしょう。
早春の樹木の影を入れて
悼み歌を一つ作ろうとおもいましたが
このあたりには
街路樹もありません。
ただ道がベルトになって
どこまでもどこまでもながれてくるだけです。
行手の信号機が
青から黄になり赤になって
二重タイヤの大トラックが
前を横ぎっていきました。
わたしが、いま
いる場所です。
『樹木たち』(土曜美術社出版販売)所収
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森岡書店にて、ananas pressの『Scribble』『colour full』『Science Nonfiction』、ヒロイヨミ社の『ヒロイヨミ 珈琲礼讃』『TRACES 痕跡』発売中です。どうぞよろしくお願いします。
追伸 「和紙のひろがり」のウェブサイトができたそうです