2023年6月5日月曜日

ある日/放たれた本


井の頭線でランドセルの男の子が隣で本を読み始めて、それを見ていた晴れた午後。

「雨ふりの日は、田舎のおばあちゃんがしてたみたいに、窓をつたうしずくをじっと見てるんだって。」

それから彼はねてしまって、ページをおさえていた小さな手から放たれた本がはらはらひろがり、鳥のはばたきのような音をたてた。