2021年1月16日土曜日

拾い読み日記 224

 
 あたたかい一日だった。凍てつく寒さの冬の日々に、こんな日がはさまれると、春の予感で幸福な気持ちになる。
印刷の合間に散歩した。広い駐車場の脇で枯れかけたエノコログサが風にゆれて、光っていて、ぽあぽあ、とか、もけもけ、とか、そんな擬態語が似合うな、と思った。のどかさのなかに、はっとするようなうつくしさがあった。

 毎日散歩する庭を覆っている草。草、草は神である。草——神——のうちに、わたしが愛してきたすべての人はいる。ジョルジョ・アガンベン『書斎の自画像』)

 天ではなくて草のなかに希望と信頼がある、とアガンベンは書く。ゆれるエノコログサに、その言葉をかさねていた。

 昨年おわりごろから、白内障、歯根破折、母指CM関節症、と故障が多い。50年近く使ってきたから、無理もない。肉体は有限なのだ、ということを痛感している。そう書くと、無限のものがあるみたいだな、と思ったが、どうだろう。ある、と思うときもあれば、あるのかな? と思うときもある。

 抜歯も無事にすんで、薬ものみおわり、今日からまたお酒がのめるのがうれしい。このところノンアルコールワインをのんだりしていたが、そんなにおいしくないし、夜は、ほろよい状態になるのがいい。