2021年1月12日火曜日

拾い読み日記 223


  雪は降らなかったようだが、寒い。とくに用がないので、家から出なかった。午後は頭痛がして、横になっていた。体調がよくないと、厚くて重たい本は読めない。モルポワの『エモンド』を読む。モルポワの本では、これが一番すきだ。たぶん、小さくて、薄いから。

 それは何ものでもなく、すべてである。その声、その耳、そのこだま。貝のように、断章は海のすべてのつぶやきを自らのうちに閉じ込める。断章はたった一人で無限について語る。断章の持つほんの少しの親しみ易さを絶対という。

 ユートピアに住んで書くこと、それはジャンルを超えて、破片となり、白熱した言葉に心を奪われ、それを噛みしめ、味わい、とことん使い果たしてしまうことである。

 ジャンルを超えていき、どのジャンルにも属さないありかたにあこがれる。言葉のありかた。本のありかた。存在のしかた。

 ある本をよんでいて、自分のすきな歌人が自死で亡くなっていたことを知った。48歳で。病死かと思っていた。その本には、彼女の歌から強い孤独感や寂しさをよみとって、もし誰かが見て(支えて)いれば……、といったようなことが書いてあって、なんだかげんなりして、本を閉じた。彼女の歌はそうした眼差しから遠いところにあるように思う。

 もうすぐ49歳になる。