2020年10月9日金曜日

拾い読み日記 206


 太い枝から細い枝が垂れ下がり、そこに生った柿の実が熟して、ときどき風でゆらゆら揺れている。その実にメジロが止まり、揺れながら、実をついばんでいた。曲芸みたいだな、と思って見ていた。雨が降り続く日。

 レイ・ブラッドベリ『何かが道をやってくる』を買ったのは、先週、夫と行った銀座のナルニア国で。だいぶ前に持っていたけれど、読まずに手放してしまった。今また何気なく手にして、読んでみると、10月の話だった。「そして、彼らが一夜のうちにおとなになり、もはや永久に子供でなくなってしまったのは、その十月の、ある週のことであった。」
 文章が、ところどころ奇妙だったり美しかったりして、読むのをやめられないので、三分の一ほど読んだ。台風の季節に読むのに、よいようだ。
 
 最近、洋服を買うことを楽しみだした夫は、もう本はそんなに買わないと思う、といっていたが、その舌の根も乾かぬうちに、ナルニア国で、7000円以上も絵本を買っていた。ちいさな甥と姪に贈るのね、いいおじさんだな……と思ったら、ぜんぶ自分のための絵本、とのことだった。そのあとビールをのみながら、買った絵本をほこらしげに見せてくれた。

 永久に子供でなくなる、なんて、物語の中だけのことではないか。
 ひとは、自由に、おとなになったりこどもになったりできると思う。おとなの自分は、こどもの自分に、すきなだけ絵本を買ってあげられるのだ。