神保町でのお昼休み、雨もそれほど降っていないので、少し足をのばして、20年前に行きつけだった小料理屋に、お昼をたべにいった。行きつけといっても、店主のご夫婦と特に親しくしていたわけではないので、むこうはまったく覚えていない。どんなふうになっているのか、好奇心となつかしさから、行ってみた。
店内はぜんぜん変わっていなかったが、ふたりは20年ぶん年をとっていた。そっけない感じの奥さんは、人なつっこい感じになっていた。髪が白くなったヒゲのだんなさんは、あいかわらず、いいひとそう。味は変わっていない。店を出て歩いていると、なんだか、じいんとした。誠実さって、こういうことかなあ、と思いながら。
読みかけの國分功一郎・互盛央『いつもそばには本があった。』をかばんに入れていたのに、まったく読めなくて、行きの電車では、音楽を聴いていた。
今この時この橋渡って走り出す
爆弾と竜巻と物質主義をくぐりぬけ
犬には犬のための犬の愛が犬にある
しっぽまく うすら汚れる
とぼとぼ歩く
途方に暮れる 犬とよばれる でも 生きてゆく
爆弾と竜巻と物質主義をくぐりぬけ
犬には犬のための犬の愛が犬にある
しっぽまく うすら汚れる
とぼとぼ歩く
途方に暮れる 犬とよばれる でも 生きてゆく
(矢野顕子「I am a dog」)