2020年6月9日火曜日

拾い読み日記 189


 暑い日。今日は電車に乗っていつもより遠くにいく予定なのだけど、体力はもつのかどうか、不安だ。

 昨夜、アントニオ・タブッキ『インド夜想曲』(須賀敦子訳、白水社)を読み終えた。ちかごろあたまがぼんやりして、ぜんぜん本が読めない、と思っていたが、するするとページをめくらされ、最後のページまで連れてこられた。夜、ひとりの部屋で、夜の闇が物語のなかにまで侵入してきて、読み終えても暗い靄がかかったままで、やっぱりあたまはぼんやりしていた。

 夜中の待合室で、弟に背負われた小さな占い師が主人公に告げる。
 「あなたはここにいない」。あなたはもうひとりの人。

 まるで自分にいわれたみたいだ。でも、どうしてだろう。