2020年4月3日金曜日

拾い読み日記 169


 小さい歯 U幼稚園で 
 菅原克己

小さい歯がよく光った。
風も光った。

ぼくはすぐわかる、
声々をちらばせながら
やさしい時が通って行くのを。

駈け出してはすぐもどる。
小さい股が空気を打つ。
蒼い影がまわりをひたす。

小魚たちがひらひらしながら
その光を刺してゆく
抵抗のない水のように。


 今朝は何かあかるい詩が読みたくなり、「朝」という詩を思い出して『菅原克己詩集』(現代詩文庫)を手にとった。
 べつの詩にこころひかれる。
 小さい歯の白がまぶしい。小さいものはよく光る。

 往来をゆく子どもが、「こんにちは」「こんにちは」と元気な声で、だれかに挨拶している。すこしわざとらしいくらい元気な声だ。