2020年3月28日土曜日

拾い読み日記 168


ふたりは欠けていて
むねのうちを うすもものはなびら さらさらと流れ くるしい夜が続いていた
一文字の口唇からともしれず しのびねの ほとほととたたく瀬戸のうす明りにも
はなは さらさらさらさらと降っていた

(三井葉子「さくら」) 

 昨日、夜道を歩いていて、桜に行きあい、この、さらさらという音を、聞いたように思った。人のゆく道でも、ゆかない道でも、桜はみごとに咲いていて、風にゆられて、雨にぬれて、もう、散ってしまうのだろうか。