2019年7月1日月曜日

拾い読み日記 139


 今日も梅雨空。しだいに、曇天が、つらくなってきている。あたまの上に、ずしんと載っているよう。湿気のせいで、身体が重たい。やるべきことを、ちょっとずつこなす。よちよち歩きみたいな速度で進める。
 書こう書こうと思っていた手紙がようやく書けて、すこしだけ目の前の霧が晴れた。

 夜は静かな音楽をかけて、本を読んだ。須賀敦子『ヴェネツィアの宿』。何度か読んでいる気がするが、はじめの二編を読んで、今日はそこまで。いくつもの時間が絡み合わされたみごとな織物にくるまれているようで、胸がつまったり、あたためられたり、本を閉じたあとは、その織りかたのみごとさに、目眩のような感覚をおぼえた。

 とうとうここまで歩いてきた。ふと、そんな言葉が自分のなかに生まれ、私は、あのアヴィニョンの噴水のほとりから、ヴェネツィアの広場までのはてしなく長い道を、ほこりにまみれて歩きつづけたジプシーのような自分のすがたが見えたように思った。