2019年6月23日日曜日

拾い読み日記 136


 今日もくもり空。雲が襞の多いカーテンみたいに空を覆っている。
 気圧のせいか、午後すこし頭痛。
 気ままに読書。鶴ヶ谷真一『記憶の箱舟』、山頭火の日記、斎藤史、若山牧水、笹井宏之の歌集など。

 書かざればわが歌消えむ六月のうつつに薄きながれ蛍や

 さかさまに我の毛並の撫でらるる恥辱汗ばみやすき六月

 ただよひのとめどもあらぬ魂ひとつ水のゆくへの白きみなつき

 『斎藤史歌集』(不識文庫)より。ノートに写す。書いたからおぼえるのか、書いたから忘れるのか、わからないけれど。

 何年か前にかまくらブックフェスタで会った人に、先日荻窪のとある酒席で声をかけられた。はじめはまったく思い出せなくて、わたしと? 話しましたか? わたしと? と応じていたが(失礼だったかも)、だんだんあぶり出しみたいにその人の記憶がよみがえってきて、しかし、そのとき何を話したのかは、ほとんど思い出せなかった。

 忘れてしまうと、自分の言動も、書いたことも、自分にとっては虚構のように感じられる。それは奇妙な感覚だが、その感覚を味わうのが、けっこうすきみたいだ。いくら忘れっぽい人間だ、とあきれても、あきれられても。