2019年5月5日日曜日

拾い読み日記 117


 夜中に喉が渇いたので起きて水をのんでみたら、眠れなくなってしまった。ジャン・ジュネ『アルベルト・ジャコメッティのアトリエ』を読んだ。

 (……)もう一度言えば、彼は、彼の描線なくしてはけっして存在することのなかった白い紙を高貴にすることが、おのれの使命だと考えたように思われる。
 私は間違えているだろうか? そうかも知れない。
 しかし、彼が、自分の前にピンで白紙を止める姿を見ていると、私は彼が、白紙というものの神秘に対し、これから描こうとしている物に対するのと同じだけの敬意と慎みを抱いているような気がするのである(彼の素描は『骰の一擲』の頁組を思わせると、私はすでに記しておいた)。

 描かれているジャコメッティの姿と、それをみているジュネのまなざしを、思い浮かべる。そしてそれを書いているジュネの手を。眠れない夜の空気が、変質するのを感じる。
 机の下には、印刷する前の紙がある。箱に入って、刷られるときを待っている。

 このところTwitterに依存しすぎのような気がしてきたので、みるのをちょっとやめたい。それでもお知らせとかもしなくてはならないので、みるだろう。はがきもぜんぜん書けていない。郵便配達も休みだから、と自分にいいわけをしている。

 陰口をいわれて、とても怒っている人のTweetを、たまたま読んだ。
 年をとってわかったことは、陰口をいった人でなく、それを自分に伝えた人のほうに悪意がある場合が多い、ということだ。悪意は、無意識の場合もあるから、やっかいだ。
 もやもやすることがあまりにも多いので、やっぱり、Twitterは……。知らなくてもいいことを知りすぎる。退屈と好奇心のせい? だとするなら、向き合うべきは、そこなのだろう。ひとつのことに、集中できない。制作に、もっと力をそそぎたい。
 時間には限りがある。わかっていても、逸れていこうとする。

 お昼すぎ、図書館の近くで、灰色の雲が突然広がったのをみて、いそいで家に戻り、干していたふとんを取り込んだ。30分後、雨と雹が降ってきた。こういうとき、誰かに、よくやった、とほめてほしいと思う。ごはんをたべて、ぼんやりしていたら、猛烈に眠くなって、二時間ほど昼寝した。眠れないのは、たぶんそのせいだ。