2019年3月16日土曜日

拾い読み日記 96


 二日つづけて朝食にフレンチトーストを作ってたべた。ラジオから流れてきたジョニ・ミッチェル「a case of you」のカバーに、手を止めて聞き入った。声はだいぶ年をとった男性のもので、よろよろ歩くひとみたいに、あぶなっかしい歌いかた。女性の澄んだ声が、そこにやさしく手を添えるようにからんでくる。すごく感動して、プレイリストを調べて、何度も聞いた。
 歌っていたのは、クリス・クリストファーソンとブランディ・カーライル。アルバムは、「Joni 75」。声は一瞬で何かを伝える。あっけなく、あっという間に、心を摑まれる。

 朝から三鷹の地図を、Googleマップをみながら作った。午後から明るくなってきたので出かけたいが、まだいろいろと、家でやることがある。
 今日も、本はさほど読めない気がする。本の声は、歌とちがって、聞きにいかなければならないが、今は、なかなか、できない。

 この小さな書物を道でひらいてから、最初の数行を読んだところでそれをふたたびとじて、胸にしっかりおしつけ、見る人のいないところでむさぼり読むために、自分の部屋まで一気に走ったあの夕方にかえりたいと思う。/アルベール・カミュ(J・グルニエ『孤島』序文)