2019年2月27日水曜日

拾い読み日記 85

 
 うすぐもりの寒い日。青空は見えなくて、遠くのほうに淡いブルーグレーがたなびいているのが見える。午前中、dip in the poolを流して『ほんほん蒸気』の製本をした。

 プールにうっかり落ちて沈んでいく夢をみた。自分は自由に体が動かせないくまのぬいぐるみか何かで、すぐ水を吸ってしまい、ゆっくりと深いところに落ちていく。くまなのであまり苦しくはなかったが、沈んでいくのは悲しかった。底につく前に、なめらかでしなやかなからだをしたイルカのような生きものがどこからかすいとやってきて、すくい上げてくれた。

 昨日は紀伊國屋書店で本を三冊買った。デボラ・フォーゲル『アカシアは花咲く』、津野海太郎『最後の読書』、金井美恵子『たのしい暮しの断片(かけら)』。
 
 『最後の読書』は、「読みながら消えてゆく」という章からはじまる。書くより読むほうが大事、という晩年の露伴の言葉を知った。「わたしはもうじき読めなくなる、しかも読みたい本はどっさりだ。書いている時間は無いよ」。幸田文の随筆からの引用。

 読めるかどうかはわからないが、本を買うことをやめないようにしよう。お金がなくなることより本を読まなくなることのほうがこわい。読めないわけではないのに読まなくなることのほうが。そこで気がつかないうちに失われてしまうもののほうが、とりかえしのつかないことなのではないか、と思う。

 夫はめずらしくあまり本を買わなかった。本屋にいって、喫茶店にいって、また本屋にいって、喫茶店にいって、夜は西荻窪でごはん。AさんとOさんに、買ったばかりの本を袋から取り出して、見せたりした。